商品ページを読んで、レビューを見て、迷って、離脱する——従来のオンライン購入は「情報を集めて自分で判断する」作業でした。ライブコマースは、その構図を変えます。配信者がその場で商品を使い、質問に答え、視聴者は見ながら、納得しながら、その場で買う。買い物が「作業」から「体験」になるのです。データで見ると、この距離の近さは数字にもはっきり表れています。
ライブコマースの最大の特徴は、視聴と購入の距離が極端に近いことです。NTTコム リサーチの調査では、ライブコマースの視聴経験者のうち54.8%が、実際に商品を購入した経験があると回答しました。動画を「見ただけ」で終わらず、過半数がそのまま購入まで進んでいるのです。広告を見た人の何%が買うか——という通常の指標と比べれば、この転換率の高さは際立っています。
54.8%
ライブコマース視聴経験者のうち、商品を購入した経験がある人
出典:NTTコム リサーチ「『ライブコマース』に関する調査」(調査期間2022/12/7〜2023/1/17・n=566)prtimes.jp
この購入経験率は、若い世代ほど高くなります。同じ調査で、視聴経験者の購入経験率は20代で66.2%、30代で59.6%。全体の54.8%を大きく上回り、若年層では「ライブを見て買う」がすでに珍しい行動ではなくなっています。買い物の入口がテレビショッピングや検索からライブ配信へ——その移行は、これから消費の中心になる世代から始まっています。
ライブコマース視聴経験者の「購入経験率」(年代別)
出典:NTTコム リサーチ「『ライブコマース』に関する調査」(2022/12〜2023/1・n=566) prtimes.jp
ライブコマースは「見る」と「買う」のあいだにあった迷いの時間を、その場の納得に変える。だから視聴者の過半数が、そのまま購入へ進む。
では、日本でライブコマースはどこまで浸透しているのか。NTTコム リサーチの調査では認知率は31.9%、実際の視聴経験率は3.9%でした。MMD研究所の調査でも認知43.2%に対し、利用経験は12.7%。つまり「名前は知られ始めたが、まだ多くの人は体験していない」段階です。裏を返せば、これから利用者が増える余地が大きい市場だということ。MMD研究所の調査では、未利用者を含めた23.2%が「今後利用したい」と答えています。
日本が伸びしろ段階である一方、海外ではライブコマースがすでに巨大な売り場になっています。海外(参考)として、中国では2023年のライブEC(ライブコマース)の流通総額(GMV)が4.9兆元超に達し、これはオンラインショッピング全体の31.9%を占めます(二次:Statista/出典元100ec.cn)。つまり中国ではネット通販の約3分の1がライブ経由。米国でも、ライブEC売上は2025年に約146.4億ドルへと約50%成長しました(海外参考:eMarketer・2026年1月)。動画×リアルタイム接客は、規模が証明された「新しい売り場」なのです。
中国:オンラインショッピングGMVに占めるライブEC比率(2023・海外参考)
出典:Statista「China: GMV of e-commerce livestreaming 2023」「share of livestreaming e-commerce in online shopping 2023」(海外参考・二次/出典元100ec.cn・2026-06-14閲覧) statista.com
ここまでのデータをつなぐと、ひとつの構図が見えます。①視聴者の過半数(54.8%)がそのまま購入し、若年層では3分の2近く(20代66.2%)が購入を経験している。②日本の利用経験はまだ12.7%で伸びしろが大きく、23.2%が利用意向を持つ。③中国・米国では、ライブはすでに主要な売り場として規模が証明されている。
ライブコマースが効くのは、それが「商品ページ+レビュー+接客」を1本の配信に圧縮するからです。視聴者はリアルタイムで質問でき、配信者は実物を動かして見せ、その場で疑問が解ける。これは実店舗の接客体験を、画面の中に持ち込む行為に近い。買い物を「情報処理」から「体験」へ変えることこそ、ライブコマースの本質的な価値です。
選ばれるために必要なのは、もっと多くの情報を並べることではない。見て、聞いて、その場で納得できる「体験」を届けることだ。
日本はまだ立ち上がりの段階。だからこそ、動画とリアルタイム接客を組み合わせた新しい売り場づくりは、いま始めるほど先行者になれます。ショート動画やSNSライブと連携させ、「見た人がそのまま買う」導線を設計する——それが、これからの「選ばれる」集客の打ち手になります。