運送会社が「候補に残るか、外されるか」を分けるのは、運賃の安さや車両の台数より前にある問いです。荷主は「事故を起こさず、安定して運んでくれるか」を、求職者は「安心して長く働けるか」を確かめようとします。どちらも外からは見えにくい"人と現場の質"ですが、それを第三者が評価し、見える形にする仕組みが国と業界には用意されています。Gマーク(安全性優良事業所)と働きやすい職場認証です。この2つの"証明"をどう使うと選ばれる材料になるのか、国内データで整理します。
荷物を託す側にとって、運送会社選びの失敗は「その日の遅延」では終わりません。事故が起きれば、荷物そのものだけでなく、納品先との信頼や自社のブランドまで傷つきます。だからこそ荷主は、価格や対応エリアと並んで「この会社は安全に運べるのか」を見ます。ところが安全への取り組みは、外から車両やWebサイトをどれだけWebで見ても分かりにくい。そこを埋めるのが、業界団体による第三者評価「Gマーク(安全性優良事業所)」です。事業所単位で交通安全の取り組みを評価・認定・公表する制度で、その目的は「利用者がより安全性の高い事業者を選びやすくする」こと——つまり荷主のための"見える化"です。
34.4%
Gマーク(安全性優良事業所)の認定を受けているトラック運送事業所の割合(29,210事業所・約3社に1社)
出典:全日本トラック協会「Gマーク制度について」(2025年12月16日現在・安全性優良事業所29,210事業所=全事業所の34.4%/2026-07-16閲覧)jta.or.jp
認定を受けているのはトラック運送事業所の約3社に1社。裏を返せば、Gマークを持っていること自体が、まだ全事業者に共通する状態ではありません。持っている会社にとっては「安全に取り組んでいる証拠」を示せる材料であり、持っていない会社との違いが生まれる余地があるということです。ただし、認定は「取ったこと」より「荷主に伝わっていること」で初めて効きます。会社サイトや車両、営業資料でマークと取り組みが見えなければ、せっかくの証明も荷主の判断材料には届きません。
安全は、いちばん見えにくく、いちばん問われる。だから「第三者が認めた」という証明が、荷主の不安をほどく。
選ばれる相手は、荷主だけではありません。運送・物流はいま、人が採れない業種の代表格です。帝国データバンクの調査(2025年1月)によると、正社員が「不足している」と感じている企業は運輸・倉庫で66.4%。全業種平均(53.4%)を大きく上回り、現場の担い手が埋まっていません。人手が足りない市場では、条件を出す会社より、応募先を選ぶ求職者のほうが強い立場になります。そして求職者が知りたいのは、給与や休日といった条件の先にある「実際に働きやすい職場かどうか」です。
66.4%
正社員が「不足している」と感じている運輸・倉庫業の企業割合(全業種平均53.4%を上回る)
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」(2025/2発表・有効回答1万1,014社/2026-07-16閲覧)tdb.co.jp
その「働きやすさ」も、求人票の条件だけでは伝わりません。ここでも第三者の証明が使えます。国土交通省の「働きやすい職場認証制度」(正式名称・運転者職場環境良好度認証制度)は、長時間労働の是正など働き方改革に取り組む事業者を認証し、職場環境を「見える化」して求職者の就職を後押しする制度です。取り組みの水準に応じて一つ星・二つ星・三つ星の段階があり、トラック運送では制度開始からの累計で2,502社が認証を受けています(令和6年4月時点)。求職者に「この会社は国の基準で職場環境を整えている」と示せる、数少ない客観的な材料です。
トラック運送の「働きやすい職場認証」累計取得数(令和6年4月時点・段階別)
出典:国土交通省「『働きやすい職場認証制度』令和5年度認証事業者公表」(令和6年4月5日発表・トラック累計 一つ星1,520/二つ星948/三つ星34=計2,502社/2026-07-16閲覧) mlit.go.jp
ここが分かれ目です。Gマークも働きやすい職場認証も、取得は前提であって、ゴールではありません。荷主も求職者も、問い合わせや応募の前に、まず会社を"調べ"ます。会社サイト・求人票・Googleビジネスプロフィール・SNSに、認定マークと「なぜ安全か・どう働きやすいか」が見える形で置かれて初めて、判断材料として届きます。逆に、認証を取っていてもサイトのどこにも書かれていなければ、外からは「取り組んでいない会社」と区別がつきません。証明は、掲示されて価値になります。
この「見せ方」を、荷主向けと求職者向けの両方の目線でそろえておくことが大切です。荷主には安全と実績を、求職者には働きやすさと現場の様子を。同じ会社の情報でも、見せる相手によって響く材料は違います。第三者認証はその両方に効く数少ない共通材料であり、しかも「自分で言う」のではなく「第三者が認めた」という形で伝えられる点に強みがあります。
ここまでのデータを一本の線でつなぐと、優先順位が見えてきます。①荷主は「安全に運べるか」を確かめ(Gマークは34.4%=まだ差がつく)、②求職者は「働きやすいか」を確かめ(運輸・倉庫の正社員不足66.4%=選ぶのは求職者)、③どちらの証明も、見せなければ伝わらない。だからこそ、次の順で整えることが荷主開拓と採用の両方に効いてきます。
第三者認証は、特別な会社だけが持つ勲章ではありません。事故を起こさないための日々の安全管理と、働く人を大切にする現場づくりという"当たり前"を、外から見える形にしたものです。運べる量が細っていくこれからの時代に、荷主にも人にも「選ばれる側」でい続けるために——まずは自社の取り組みを、証明という言葉にして見せることから始まります。
その"安全"と"働きやすさ"、
荷主や求職者に伝わっていますか?
取得した認証や現場の取り組みが、発注前・応募前の相手にどう見えているか。運送・物流の観点から、いまの見せ方を無料で診断し、優先順位をレポートにしてお届けします。