「うちは技術と実績で選ばれているから、Webは会社案内があれば十分」——製造業・BtoBでよく聞く言葉です。しかし、いまの発注側の担当者は、あなたの会社に問い合わせる前に、Webで技術・実績・対応範囲を調べて候補を絞り終えています。製造業を対象にした調査では、61%が「事前にWebで比較検討し、候補を数社に絞った段階で問い合わせる」と回答。製品選定では75%が検索エンジンを、70%が企業の公式Webサイトを使っています。サイトが古い・情報が薄いと、商談のテーブルに着く前に外れる——本記事では、その現在地を国内データで整理します。
BtoBの購買は、営業に会う前にほぼ独力で進みます。決裁者を対象にした調査では、84%が「営業担当と接触する前に、購買を決定づける情報に触れていた」と回答。購買を決めた情報源も営業との商談・問い合わせ以外が67%を占めました。製造業に絞った調査でも同じ構図で、製品選定・購買に関わる担当者の61%が「事前にWeb上で情報を収集し、比較検討のうえ候補を数社に絞った段階で問い合わせをする」と答えています。問い合わせが来た時点で、勝負の大半は終わっているということです。
61%
製造業の購買担当者が「事前にWebで比較検討し、候補を数社に絞った段階で問い合わせる」と回答(残りは問い合わせながら検討)
出典:イントリックス「問い合わせを起こすまでのユーザー行動調査2025」(2025/1発表・製造業n=200)prtimes.jp
「候補を数社に絞る」とは、どのくらいの数でしょうか。BtoB全体の調査では、比較検討を3社以下に絞ったケースが8割超(1社16.8%/2社31.9%/3社32.7%)。製造業の調査でも、比較する企業数は「3〜5社」が60%を占め、大半が5社以内でした。裏を返せば、Webで見つけてもらえず、この数社の中に入れなかった時点で、問い合わせも見積もり依頼も届きません。「知らないから外す」のではなく、「調べた結果、候補にしなかった」——それが商談前に静かに起きています。
BtoBの比較検討で、最終的に比べた商材の数(構成比)
出典:ITコミュニケーションズ/B2Bマーケティング「BtoB商材の購買行動に関する実態調査レポート2025」(2025/5・n=517・3社以下が計8割超) atpress.ne.jp
製造業の受注は、問い合わせや商談で決まる前に、Webで候補を絞る段階で大枠が決まっている。サイトは「会社案内」ではなく、候補に残るかどうかの選考の場です。
では、その事前の情報収集で何が使われているのか。製造業の製品選定に関わる担当者を対象にした調査では、製品選定時に75%が「検索エンジン」を、58%が「企業のWebサイト」を利用しています。別の製造業調査でも、情報収集で使う媒体は「企業の公式Webサイト」が70%で最多。しかもこの割合は前回調査の59%から11ポイント増加しており、展示会(41%)や新聞・業界紙(32%)を大きく上回りました。まず検索し、企業サイトで確かめる——それが製造業の標準的な動線です。
70%
製造業の情報収集で「企業の公式Webサイト」を使う割合。前回調査の59%から11ポイント増加し、展示会や業界紙を上回る
出典:イントリックス「問い合わせを起こすまでのユーザー行動調査2025」(2025/1発表・製造業n=200)prtimes.jp
そして企業サイトで見られているのは、飾りではなく技術情報そのものです。製造業の担当者が製品選定で確認する情報は、「製品情報・仕様」が81%で最多。「価格」79%、「納期」54%、「導入事例」35%、「製品カタログ」33%と続きます。スペック・価格・納期・実績——受発注の判断に直結する情報が、Web上で揃っているかどうかを見られている。ここが薄いサイトは、候補として比較の土俵に乗りません。
製造業が製品選定で確認する情報(複数回答)
出典:イントリックス「製造業界における業者選定プロセス上の企業Webサイト利用実態調査」(2023/3発表・製造業n=100) prtimes.jp
担当者は、基本スペックだけでなく「導入して何が変わるか」まで見ています。同じ製造業調査では、企業のWebサイトに「あるとなお良い情報」として「導入効果が具体的に分かる情報」が67%で最多、次いで「ウェビナー・動画による製品説明」が44%でした。カタログ的な仕様の羅列にとどまらず、自社と近い課題での導入事例や、使用シーンが伝わる説明があるかどうか。技術情報の「充実」とは、量ではなく発注担当が判断できるだけの中身があるかを指します。
そして忘れてはならないのが、問い合わせ導線です。BtoBの検討では、製品・サービスの検討段階で使う情報源として提供企業のWebサイトが35.4%と、雑誌・専門誌(31.1%)や展示会(25.7%)を上回り上位に入っています。製造業の調査では、未接触の企業へは約7割がインターネット経由で問い合わせ、その手段は「問い合わせフォーム」が45%で最も好まれていました。せっかく技術情報で候補に残っても、問い合わせフォームが分かりにくい・スマホで開けない・返信が遅いと、そこで動線が切れます。技術情報の充実(候補に残る)と、問い合わせ導線(次の一歩を受け止める)は、受注の起点として両輪です。
BtoB検討段階で使われる情報源(複数回答)
出典:ITコミュニケーションズ/B2Bマーケティング「BtoB商材の購買行動に関する実態調査レポート2025」(2025/5・n=517) atpress.ne.jp
展示会や業界紙といったリアルの接点も依然として使われており、Webがすべてを置き換えるわけではありません。ただ、それらで名前を知った担当者も、最終的には検索し、企業サイトで技術と実績を確かめてから候補を絞る。Webは、あらゆる接点の「確認と選別の場」として機能しています。
ここまでのデータを踏まえると、製造業・BtoBのWebで整えるべき順番は見えてきます。「サイトをきれいにする」ことが目的ではなく、発注担当が候補を絞る過程で、比較の土俵に残り、次の一歩(問い合わせ)を取れる状態にすることが目的です。
これらは「Web担当だけの実務」ではありません。技術・実績・対応範囲という会社の中身を、発注担当が判断できる形でWebに載せる取り組みであり、受注そのものに関わる経営課題です。問い合わせが来る前の段階に、勝負どころは移っています。
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