「求人を出しているのに、応募が来ない」。その原因は、求人票の中だけにあるとは限りません。求職者は応募ボタンを押す前に、会社名で検索し、企業ホームページを開き、クチコミを読んでいます。転職活動中の99.2%が企業ホームページを閲覧し、社員クチコミを見る人の91%は「応募前」に確認——応募の手前には、会社側からは見えない「企業研究」の関門があります。国内の調査データで、その実態を確認します。
転職活動中の20〜35歳の正社員505名に聞いたマイナビ転職の調査では、99.2%が企業のホームページを閲覧すると回答しました。過半数は「必ず閲覧する」と答え、閲覧のタイミングは8割以上が「応募を検討するタイミング」です。つまり企業ホームページは、内定後の確認資料ではなく、応募するかどうかを決める判断材料として読まれています。
99.2%
転職活動中の求職者のうち、企業ホームページを閲覧する人の割合。8割以上は「応募を検討するタイミング」で閲覧
出典:マイナビ転職「ホームページに関する意識調査」(2018/12・n=505)career-research.mynavi.jp
何を見ているのかも、データがあります。『エン転職』ユーザー1万564名への調査では、84%が応募前の企業研究を「行なっている」と回答。企業研究で「参考になったもの」は企業ホームページ(50%)が最多で、転職サイト(49%)、会社クチコミサイト(41%)が続きます。知りたい情報の上位は仕事内容(93%)・給与(87%)・勤務地(76%)。40代以上では55%が企業ホームページを挙げ、世代が上がるほど公式情報への依存度は高まります。20〜39歳の就職・転職経験者540名への別の調査でも、84.8%が「企業のホームページで情報収集や企業研究を行う」と回答しており、数字は重なります。
企業研究で「参考になった」情報源(転職者・複数回答)
出典:エン・ジャパン「1万人に聞いた『企業研究』実態調査」(2018/9・n=10,564) corp.en-japan.com
これは正社員採用に限った話ではありません。ディップ総合研究所の調査(流通ニュース掲載・二次)では、アルバイト・パート求人でも78.1%が職場を「下調べ」した経験があると回答。方法の最多は「口コミサイトなどインターネットで探す」(66.7%)で、「直接下見に行く」人も40%います。雇用形態を問わず、応募の前に調べることが標準の行動になっています。
社員クチコミの読まれ方は、さらに具体的に分かっています。『エン転職』ユーザー4,513名への調査(2024年)では、転職活動中に社員クチコミを「見る」人は50%。見る人のうち91%は「応募前」に確認しています。そして67%は、クチコミの影響で「応募を辞めた」経験があると回答しました。
社員クチコミと応募行動(『エン転職』ユーザー・n=4,513)
出典:エン株式会社「『転職活動時のクチコミ閲覧』実態調査」(2024/2) prtimes.jp
注目すべきは、その先です。クチコミで不安を感じた人の85%は、その内容を企業に質問していません。確認も反論の機会もないまま、候補から外れていく——採用側に届くのは「応募が来ない」という結果だけで、理由は知らされません。
「応募が来ない」の手前には、「調べた結果、応募をやめた」がある。会社に見えるのは、応募数という結果だけです。
「うちは発信していないから、ネットに情報はない」——そうはならないことも、データは示しています。マイナビ「転職動向調査2025年版」によると、2024年に転職した1,500名のうち49.3%が、退職後に前職の会社について口コミサイトへ書き込みをしています(内容は複数回答でポジティブ45.9%・ネガティブ22.6%)。口コミサイトに限らず、SNSを含むいずれの媒体でも、4〜5割が前職について何らかの書き込みをしていました。
49.3%
転職者の約半数が、退職後に前職の会社について口コミサイトへ書き込みをしている(ポジティブ45.9%・ネガティブ22.6%)
出典:マイナビ「転職動向調査2025年版」(2025/3・2024年転職者n=1,500)career-research.mynavi.jp
つまり会社の情報は、会社自身の発信とは無関係に蓄積されていきます。自社のホームページや採用ページが空白のまま、あるいは何年も前の情報のままなら、検索した求職者が出会うのは他人が書いた情報だけになります。前段のとおり、求職者の判断材料は「企業ホームページ・転職サイト・クチコミ」の3点セット。このうち自社で内容を管理できるのは、企業ホームページだけです。そこを空けておくことは、応募判断の材料を第三者の記述に委ねることと同じ構図になります。
ここまでのデータが示す実務は、4つに整理できます。①採用ページに「知りたい情報」を揃える——仕事内容(93%)・給与(87%)・勤務地(76%)という上位3項目に具体的に答える。文字数や様式の制約がある求人票より詳しく書けることが、自社ページの役割です。②職場の「リアル」が伝わる写真を載せる——ディップ総合研究所の調査では、求職者の58.5%が求人写真を「10枚以上」欲しいと回答。一方で71.8%は「複数の店舗で使い回しされ、実際の職場ではない」写真に不満を持ち、素材画像への不満も68.1%に上ります。枚数と実在感が、下調べへの回答になります。
③不安に先回りして答える——不安の85%は質問されないまま去っていく、が前提です。残業・教育体制・入社後の流れなど、想定される疑問は聞かれる前に採用ページやQ&Aで開示する。クチコミへの返信も、「質問されない不安」に対する数少ない回答手段です。④情報の鮮度を保つ——閲覧の8割以上は「応募を検討するタイミング」に集中します。数年前の採用情報や更新の止まったお知らせは、「今も募集しているのか」「今もこの条件なのか」という新しい不安を生みます。現在の募集状況と更新日を明示しておくことが、最小コストの対策です。
採用活動は、求人票の中だけで起きていません。応募ボタンの手前で、会社はすでに検索され、読まれ、比較されています。企業ホームページと採用ページは、いわば「面接の前に行われている、もう一つの面接」。応募数を変えたいとき、最初に確認する場所は、自社の情報が求職者からどう見えているか、です。