「SNS広告は、予算が潤沢な大企業がやるもの」——そう思って手を出していないお店は少なくありません。しかし市場データを見ると、国内のネット広告費の約4割はすでにソーシャルメディアの中で動いています。そしてSNS広告の仕組みは、テレビCMと違って少額から・狙った相手にだけ出せるようにできています。一次データと各社の公式仕様から、「小さなお店にこそ向いている」理由を解きほぐします。
電通グループ4社の「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によると、ソーシャルメディアのサービス上で展開されるソーシャル広告は、2025年に前年比118.7%の1兆3,067億円。インターネット広告媒体費3兆3,093億円(前年比111.8%)のうち39.5%を占め、引き続き二桁成長を続けています。これだけの広告費がSNSの中に集まり続けているのは、そこで実際に商品が売れている——つまり広告として機能していることの裏返しです。
118.7%
2025年の国内ソーシャル広告費の前年比(1兆3,067億円・ネット広告媒体費の39.5%)
出典:電通グループ4社「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026/3/5)dentsu.co.jp
中身を種類別に見ると、SNS系が5,508億円(構成比42.1%)、動画共有系が5,126億円(39.2%)、その他が2,434億円(18.6%)。SNSのフィードも、動画アプリの合間も、まるごと「広告が売上をつくる場所」になっています。
ソーシャル広告1兆3,067億円の種類別内訳(2025年)
出典:電通グループ4社「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(2026/3/5) dentsu.co.jp
マス広告は「面」を買う広告です。エリア全員に届く代わりに、興味のない人への配信にもお金がかかります。SNS広告は逆で、「人」を選んで買う広告です。Meta(Facebook・Instagram)の公式ガイドは、まず地域・年齢・性別でオーディエンスを決め(コアターゲット設定)、さらに「興味・関心」を追加する詳細ターゲット設定で絞り込めると説明しています。「お店に通える範囲に住む、30〜50代の、料理に関心がある人」——そんな設計図を、特別な契約なしに管理画面から引けるのです。
LINE広告も、性別・年齢・地域などの「みなし属性」で精度の高いターゲティングができると公式に説明しています。配信先は、月間1億人が使うLINEのトークリストやLINE NEWS、LINE VOOMなど生活導線のど真ん中。つまりSNS広告は、「たくさんの人に見せる」のではなく「会いたい人にだけ、毎日いる場所で会う」広告です。少額でも無駄玉が出にくいのは、この絞り込みがあるからです。
ユーザー側の国内調査も見てみます。リンクアンドパートナーズがSNS広告経由で商品を購入した経験のある15〜58歳623人に聞いた調査(2024年7月)では、購入した商品について「買う予定はなかった」が27.5%、「商品に興味はあるが買う予定はなかった」が47.6%——合わせて75.1%が、広告を見る前には買うつもりのなかった人でした。検索広告が「もう探している人」に応える広告だとすれば、SNS広告は「まだ探していない人」に新しい“欲しい”をつくる広告です。指名されるのを待つ必要がない分、知名度のない小さなお店にこそ都合がいい構造です。
同じ調査では、購入のきっかけになった広告形式はZ世代50.2%・Y世代58.5%・X世代58.9%と、全世代で動画広告がトップ。「つい見てしまう」広告形式も動画が65.0%で最多でした。よく閲覧するSNSはYouTube62.3%・Instagram61.2%・X(旧Twitter)52.0%。出稿先や広告の作り方を考えるときの、実際の“居場所”のデータです。
「つい見てしまう」SNS広告の形式
出典:リンクアンドパートナーズ「SNS広告の購買行動に関する調査」(2024/7・n=623) prtimes.jp
では、実際いくらから始められるのか。まずLINE広告には、最低出稿金額がありません。公式FAQにはこうあります。
最低出稿金額はありません。ただし、予算が少なすぎると、広告効果を高めるために必要なデータが十分に蓄積されない場合があります。
——LINEヤフー for Business「LINE広告」公式FAQ(2026-06-30閲覧)
Meta(Facebook・Instagram広告)の公式ページも、費用は広告主が「1日の予算」または「通算予算」で自ら上限を決める仕組みだと説明し、少額で始める目安として「予算5米ドル以上・掲載期間7日以上」でのスタートを勧めています。1日あたりコーヒー1杯分ほどの予算でも、設計としては成立するのです。一方、TikTok広告はキャンペーンの日予算50米ドル以上・広告セット20米ドル以上が必須で、入口はやや高め。「最初の一歩」の低さで選ぶなら、LINEかMetaが現実的です。
主要SNS広告を「始める」ための日予算(公式仕様・2026-06-30閲覧)
出典:LINEヤフー for Business lycbiz.com/Meta for Business facebook.com/TikTok広告マネージャー ヘルプ ads.tiktok.com
媒体選びは、金額と目的の掛け算です。幅広い世代への再来店・地域の認知ならLINE(月間1億人・最低出稿金額なし)、興味・関心で新しいお客様を探すならMeta=Instagram・Facebook(地域×年齢×興味の絞り込み)、動画で若い層に届けたいならTikTok(ただし最低予算は高め)。前出の調査どおり「つい見てしまう」のは動画形式なので、どの媒体でもスマホで撮った短い動画が最初の武器になります。
最後に、順番の話です。広告は音量を上げる装置であって、声そのものではありません。広告をタップした人が着地するのは、あなたのアカウントのプロフィールと直近の投稿、そして口コミです。そこが何年も止まったままでは、せっかく呼んだ人がそのまま帰ってしまいます。
SNS広告の成否は、クリックの後に決まります。プロフィール・直近の投稿・口コミという“受け皿”を整えてから、音量を上げる。順番を守るだけで、同じ予算でも結果が変わります。
そしてLINEの公式FAQが示唆するとおり、少なすぎる予算を一瞬だけ投じてもデータが蓄積されず、配信は賢くなりません。だから小さなお店の正解は「大きく短く」ではなく「小さく長く」。①投稿と受け皿を整える→②日予算数百円〜数千円で絞った相手に出す→③反応が良い相手と動画に寄せていく。この回し方ができること自体が、ネット広告の約4割を占めるまでに成長したSNS広告の、いちばん中小規模の事業者に優しい性質なのです。
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