お客様がSNSに投稿してくれた写真や口コミを、公式アカウントで紹介する。LPや広告に載せる——いまや定番のUGC施策です。でもその投稿、投稿した本人の許諾を取って使っていますか?「ネットに公開されているんだから自由に使っていい」は、法律的には誤解です。この記事では、公的な整理と調査データから「UGC活用の正しい作法」をまとめます。
まず大前提から。文化庁の公式な整理では、Instagramに写真を上げたり、文章や動画を投稿したりした人は、その時点で立派な「著作者(クリエイター)」です。著作権は登録などの手続きなしに創作した瞬間、自動的に発生します。そして、他人の作品をネットに載せるには、原則として権利者の許可(許諾)が必要。つまり、お客様の投稿写真も口コミ文章も、法律で守られた「著作物」なのです。
さらに総務省のインターネットトラブル事例集も、他人の著作物を許可なくSNSへ投稿する行為を著作権侵害にあたり得るものとして注意喚起しています。加えて、人が写った写真や動画を許可なく掲載すれば「肖像権」の侵害にあたる可能性も指摘されています。お客様の投稿に本人や友人の顔が写っていれば、著作権とは別にもう一つの権利が関わってくるわけです。
お客様の投稿は「無料の素材集」ではなく、お客様がつくった「作品」。企業が使わせてもらうなら、作者への敬意が先——許諾は、その最初の一歩です。
国内企業のマーケター調査(2021年)では、マーケティングにUGCを活用した経験のある企業のうち63.8%が「SNS公式アカウントの投稿」でUGCを活用し、LP・SNS広告・公式サイト(ECサイト)もそれぞれ約半数にのぼります。さらに全体の72.4%が「今後UGC活用を拡大したい」と回答。お客様の投稿を企業が「借りて」使う場面は、これからも増え続けます。だからこそ、権利処理の作法を知らないまま運用することが、大きなリスクになるのです。
見落とされがちな誤解がもう一つ。「Instagramの埋め込み機能を使えば転載ではないから安全」という考え方です。Instagramを運営するFacebook社(現Meta)は2020年6月、「埋め込み機能は画像利用の権利を許可するものではない」との見解を示しました。UGC活用支援のアライドアーキテクツ(Letro)も、表示方法がどうであれ原則として投稿者本人への利用許諾を取得することが望ましいと整理しています。「機能的にできること」と「権利的にしていいこと」は、別物なのです。
「許諾を取りにいったら、断られたり不審がられたりするのでは」——実は、データは逆を示しています。海外の生活者調査(参考)では、自分が投稿した衣類・アクセサリーの写真や動画について、58%が「企業(ブランド)の利用を許可してよい」と回答。ホーム・生活用品でも58%、美容・健康54%、スポーツ用品53%、旅行52%と、どのジャンルでも半数以上が「聞いてくれれば貸すよ」と答えているのです。
58%
自分が投稿した衣類・アクセサリーの写真・動画を「企業が使うことを許可してよい」〈海外(参考)〉
出典:Stackla(現Nosto)「Post-Pandemic Shifts in Consumer Shopping Habits」(2021/8・米英豪n=2,042・二次:Netimperative)netimperative.com
「自分の投稿を企業が使うことを許可してよい」——投稿ジャンル別〈海外(参考)〉
出典:Stackla(現Nosto)調査2021(米英豪n=2,042・海外(参考)・二次:Netimperative) netimperative.com
そして、きちんと許諾を取って紹介することは、投稿者との関係をむしろ深めます。同じNosto(旧Stackla)の調査(参考)では、ブランドが自分の写真や動画をシェアしてくれたら「そのブランドと関わり続けたくなる」人が43%。さらに、ブランドの「応援者(アドボケイト)コミュニティ」に招待されたら61%が「より愛着を持ち、購入したくなる」と答えています。丁寧な許諾依頼と紹介は、単なる権利処理ではなく、お客様をファンに変えるコミュニケーションなのです。
43%
「ブランドが自分の写真・動画をシェアしてくれたら、そのブランドと関わり続けたくなる」〈海外(参考)〉
出典:Nosto/Stackla「Consumer Content Report」(海外(参考)/2026-07-02閲覧)nosto.com
許諾のDMは、事務手続きではなく1通のファンレター。「素敵な投稿だったので、ぜひ紹介させてください」と言われて、嫌な気持ちになる人はほとんどいません。
では実務では何をすればいいのか。UGC活用支援各社の整理と公的な原則を踏まえると、型は次の4つです。
① DM(またはコメント)で許諾を依頼する。使いたい投稿が見つかったら、投稿者本人にダイレクトメッセージやコメントで連絡し、どの投稿を・何の目的で使いたいのかを明確に伝えて、承諾の返事をもらいます。返事は必ず記録として残しておきます(誰に・いつ・どの投稿の許諾を得たか)。
② 利用範囲を明示する。「公式SNSでの紹介のみ」「LP・広告にも掲載」など、使う場所と範囲をあらかじめ具体的に伝えます。SNS紹介の許諾しか得ていない投稿を広告に転用するなど、あとから範囲を広げるときは、必ず再度確認します。
③ クレジット(出どころ)を表記する。掲載時は@アカウント名の記載やタグ付けで「誰の作品か」を示します。作者への敬意であると同時に、「公式に紹介された」という投稿者の喜びにもつながり、次のUGCを生む循環になります。
④ 規約・ルールを整備する。ハッシュタグキャンペーンでUGCを募るなら、応募規約に二次利用の範囲を明記しておきます。日常運用でも「許諾なしでは使わない」を社内ルールとして文書化し、担当者が変わっても同じ作法が守られる状態にします。
やらせ・サクラがステマ規制で罰せられる時代(→関連記事)、そして口コミがAIにも読まれる時代に、資産になるのは堂々と出どころを示せるUGCだけです。権利の作法は、コストではなく信頼への投資。「聞いてから使う」——たったそれだけのことが、お客様との関係を深め、ブランドを守ります。