夜のゴールデンタイムに、家族そろってテレビの前——その光景は、データの上ではすでに過去のものです。総務省の全国調査で、1日のうちネットを使う時間が、テレビを見る時間を平日・休日ともに上回りました。人の目が集まる「見られる場所」の主役交代を、政府統計と広告費データで確かめます。
総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(13〜79歳・1,800人)によると、平日1日あたりのインターネット利用は181.8分。対してテレビ(リアルタイム)視聴は154.7分です。さらに、家でゆっくりテレビを見るはずの休日でさえ、ネット183.7分 vs テレビ182.7分とネットが上回りました。これは70代まで含めた全年代の平均値です。
181.8分
平日1日あたりのインターネット平均利用時間(テレビのリアルタイム視聴は154.7分)
出典:総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2025/6/27公表・政府一次)soumu.go.jp
流れを遡ると、入れ替わりの速さがわかります。13〜69歳ベースの経年データでは、2015年の平日はテレビ174.3分 vs ネット90.4分と、テレビが約2倍。それが2020年度調査で初めて逆転し、2024年度にはネット203.5分 vs テレビ123.8分と約80分差まで開きました。9年間で、1日の「見られる場所」はそっくり入れ替わったのです。
起きているのは「テレビ離れ」というより、視聴の「引っ越し」です。人は映像を見るのをやめたのではなく、見る場所と画面を変えただけなのです。
平均値以上に劇的なのが、年代別の数字です。平日の10代はテレビ39.7分に対しネット243.4分——約4時間、テレビの約6倍です。20代もテレビ52.6分 vs ネット257.2分で約5倍。若い世代にとってテレビは「たまに見るもの」になりました。一方で60代はテレビ226.7分 vs ネット151.3分、70代はテレビ310.7分と、シニアは今もテレビ優位。年代によって「見ている場所」が真っ二つに分かれています。
平日1日の平均利用時間 ネット vs テレビ(年代別・令和6年度)
出典:総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>」(2025/6公表・13〜79歳1,800人/2026-06-24閲覧) soumu.go.jp
しかも、この境界線は毎年上の年代へ動いています。今回の調査では休日の40代で、初めてネット(199.0分)がテレビ(159.1分)を超過。60代のテレビ視聴も1年で約30分減りました(257.0分→226.7分)。「そもそもテレビをつけるか」も変わり、平日にテレビ(リアルタイム)を見た人の割合は72.1%と、2020年の84.0%から低下。ネット利用者の割合は87.0%に達しています。
では、テレビから移った時間はどの画面にあるのか。答えはスマホです。同調査では、どの年代でも「モバイル機器(スマートフォン等)」によるネット利用時間が最長。平日の全年代平均でモバイル116.8分に対しパソコンは50.0分、10代は198.2分をスマホ経由で使っています。モバイルでネットを使った人の割合は平日・休日ともに10代〜40代で9割超です。
そして、ネットの使いみちの中で最も長いのが「動画投稿・共有サービスを見る」——平日の全年代平均で50.8分と全項目中トップ、10代は平日116.0分・休日165.4分にのぼります。つまり「テレビからネットへ」の実態は、「リビングの大画面から、手のひらの縦画面へ」。動画は今、スマホで見るものになりました。
視線が動けば、企業のお金も動きます。電通「日本の広告費」によると、2019年、インターネット広告費(2兆1,048億円)がテレビメディア広告費(1兆8,612億円)を超え、初めて2兆円台に到達。そして2024年のネット広告費は3兆6,517億円——日本の総広告費7兆6,730億円の47.6%を占め、テレビメディア広告費(1兆7,605億円)の約2.1倍になりました。広告費は「人の視線がいまどこにあるか」を映す相場です。その相場が、主戦場はネット動画側だと示しています。
47.6%
日本の総広告費に占めるインターネット広告費の割合(3兆6,517億円・テレビメディアの約2.1倍)
出典:電通「2024年 日本の広告費」(2025/2/27発表)dentsu.co.jp
見られる場所が変われば、「効く表現」も変わります。テレビの広告は、お茶の間の大画面に向けて磨き上げた30秒——プロのナレーション、完璧な照明、作り込まれた世界観の勝負でした。しかしスマホの縦画面では、動画は興味に合わせて1本ずつ流れてきて、指1本でスキップされます。そこで手を止めてもらえるのは、広告のような完成度ではなく、お店の人が自分の言葉で話す、等身大の1本です。視聴者は放送品質を期待していません。「自分に関係のある、本当の話かどうか」だけを見ています。
テレビは制作費の勝負でしたが、ネットの縦画面は「等身大」で戦える場所。見られる場所の主役交代は、中小のお店にとってむしろ追い風です。
1日約3時間、人はネットの画面を見ています。その中に、あなたのお店が「見つけてもらえる形」で存在しているか。凝ったCMを1本つくることより、みんなが毎日見ている画面に、等身大の発信を置き続けること。それが「見られる場所」が入れ替わった時代の、集客の第一歩です。
あなたのお店は、
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