スマホを縦にスワイプして次々と流し見するYouTubeショート。「本編のついで」「若者のヒマつぶし」と思われがちですが、データが示す姿は違います。ショートは、お店や会社が初めて知られる「新しい入口」であり、しかも長尺動画という資産への導線にもなる。YouTube公式の発表と国内データで、その実像を確かめます。
まず規模から。YouTube公式ブログによると、ショートの視聴回数は2024年3月時点で1日平均700億回超。さらに2025年6月、YouTubeのニール・モハンCEOはカンヌライオンズで「ショートは現在、1日平均2,000億回以上視聴されている」と発表しました(いずれもグローバル値=海外・参考)。約1年3カ月で3倍近くに伸びた計算で、YouTubeの中の「おまけ」どころか、視聴の主役級に育っています。
2,000億回/日
YouTubeショートの1日平均視聴回数(2025年6月発表・海外=グローバル値・参考)
出典:YouTube公式ブログ「Neal Mohan at Cannes Lions 2025」(2025/6/18)blog.youtube
仕様も「短い切れ端」から進化しています。公式ヘルプによると、ショートは現在最大3分まで作成可能(2026-06-09閲覧)。商品説明やビフォーアフターなど、「伝えるべきことを伝え切れる」長さになりました。
「ショート動画=TikTok」というイメージは、国内データを見ると思い込みだとわかります。Google公式のThink with Googleによると、国内のYouTubeショートの1日あたり視聴者数は2023年比で20%以上増加(2024年1月時点)。13〜54歳の1カ月あたり利用率はYouTubeショートが62%で他のショート動画サービスを上回り1位、13〜24歳の若年層に限っても1位で74%が利用しています。
これはGoogle自身の調査だけの話ではありません。MMD研究所の調査(18〜69歳・n=7,000)でも、ショート動画サービスの利用率はYouTubeショートが38.5%で最多。Instagramリール(23.1%)、TikTok(20.6%)を大きく引き離しています。もともと幅広い世代が集まるYouTubeの「中」にショートがあるため、若年層だけでなく、購買力のある30〜50代にも届くのが特徴です。
国内ショート動画サービスの利用率(視聴+投稿の合計)
出典:MMD研究所「ショート動画とコマースに関する調査」(2023/3実施・18〜69歳・n=7,000) mmdlabo.jp
ショートが「入口」である最大の証拠がこの数字です。Google/Materialの国内調査によると、69%の人が、YouTubeショートで好きなものを見つけ、その後、長尺バージョンの動画を視聴すると回答。ショートで偶然出会い、興味を持ったら同じYouTubeの中で長い動画へ進んで深掘りする——この行動が多数派になっています。
69%
YouTubeショートで好きなものを見つけ、その後、長尺動画を視聴する人(国内)
出典:Google/Material「Power of YouTube Shorts」(日本・2024)/Think with Google「YouTube Recap 2024」(2024/10)business.google.com
ここがYouTubeショート固有の強みです。ショートのフィードは、TikTok同様にアルゴリズムが「探していない人」にも届けてくれる認知の装置。ただしYouTubeでは、その一本の先に同じチャンネルの長尺動画・チャンネル登録・検索や関連動画からの再訪が地続きでつながっています。ショートで知られ、長尺で理解され、登録で「継続的な接点」に変わる。入口から本編までがひとつのアプリ内で完結するのです。
ショートで「知ってもらう」、長尺で「好きになってもらう」。同じYouTubeの中で入口から本編までつながっていることが、ショート最大の強みです。
「ショートまで作る余裕はない」という会社ほど、知っておきたい公式機能があります。YouTubeヘルプによると、アップロード済みの長尺動画から60秒以内の部分を選んで、そのままショート動画を作成できる(リミックス機能・2026-06-09閲覧)。つまり、施工事例・お客様インタビュー・ノウハウ解説など、すでに持っている動画資産が、そのまま入口の材料になるということです。
実務の型はシンプルです。①過去の長尺から「結論が出る60秒」を切り出す(作品のビフォーアフター、質問への答えなど1本1テーマ)。②冒頭2秒で答えから見せる(スワイプされる前に価値を提示)。③固定コメントと概要欄で長尺・チャンネルへ誘導する(69%の「深掘り行動」の受け皿を用意)。④ショートで反応が良かったテーマを、次の長尺の企画にする。ショートは長尺の代わりではなく、長尺という資産の回転数を上げる装置です。
新しく撮り始める前に、まず「もう持っている動画」から入口を切り出す。ショートは、眠っている動画資産を起こす最短ルートです。
世界で1日2,000億回(海外・参考)という規模、国内利用率1位という足場、そして69%が長尺へ進むという導線。3つの数字が示すのは、YouTubeショートが「ついで」ではなく、選ばれるための新しい入口だという事実です。長尺動画を資産として積み上げてきた会社ほど、その入口は今日から低コストで開けます。