「エステ市場は縮小している」——数字の上では、その通りです。リクルートの「美容センサス2026年上期」によれば、エステサロン市場は3116億円・前年比-7.3%。しかし内訳を見ると、この市場は一様に縮んでいるわけではありません。女性の脱毛は-24.3%、女性フェイシャルは-16.1%と大きく縮む一方で、男性フェイシャルは+24.8%、男性ボディ・痩身は+22.7%と2桁成長しています。縮小と成長が同じ市場のなかに同居する「二極化」——このとき問われるのは、規模ではなく「うちは誰の・何のサロンなのか」が外から見えているかです。本記事では、その現在地を公開データで整理します。
リクルート(ホットペッパービューティーアカデミー)が人口20万人以上の都市に住む15〜69歳男女13,200人に行った「美容センサス2026年上期」では、エステサロン市場の規模推計は3116億円で前年比-7.3%でした(出典①)。エステに限らず、美容サロン市場全体でも2兆5,299億円・前年比-5.7%と、理容室以外の全領域で前年割れです(出典②③)。同調査で利用が減った理由の1位は「美容代を節約する必要が出てきたため」。つまり縮小の主因は、エステそのものへの需要消失というより、物価高のなかで美容代の優先順位が問われていることにあります(出典②)。
優先順位が問われる市場では、「なんとなく良さそう」では選ばれにくくなります。限られた美容代を何に使うか、利用者は以前より慎重に比べる。その結果が、次に見る「カテゴリごとの明暗」としてはっきり表れています。
カテゴリ別に見ると、明暗は鮮明です。女性市場では、フェイシャルが939億円・前年比-16.1%、ボディ・痩身が507億円・-7.2%。脱毛市場は全体で960億円・-14.4%、うち女性脱毛は479億円・-24.3%と、最も大きく縮んでいます(出典①)。一方の男性市場は、フェイシャルが342億円・+24.8%、ボディ・痩身が369億円・+22.7%と、どちらも2桁の伸び。リクルート自身も、脱毛のように大きく縮小する領域がある一方で、フェイシャルのように着実に価値を認められ選ばれるカテゴリも存在する、という二極化の構図を指摘し、男性市場ではフェイシャル・ボディ/痩身が拡大しているとしています(出典②③)。
+24.8%
男性フェイシャルエステ市場の前年比(市場規模342億円)。男性ボディ・痩身も+22.7%(369億円)と2桁成長
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期【エステサロン編】」(2026/6/25発表)hba.beauty.hotpepper.jp
-24.3%
女性脱毛エステ市場の前年比(市場規模479億円)。女性フェイシャルも-16.1%(939億円)と縮小
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期【エステサロン編】」(2026/6/25発表)hba.beauty.hotpepper.jp
伸びているのは市場規模だけではありません。男性フェイシャルの年間利用回数は3.57回で+15.5%、1回あたり利用金額も4,862円で+7.2%と、回数・単価の両方が増えています(出典①)。「男性がエステに通う」ことが、一部の先進的な行動ではなく、継続的な習慣として定着し始めていることを示す数字です。
男性エステ市場の伸び(前年比・美容センサス2026年上期)
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期【エステサロン編】」(2026/6/25発表・2026/1/21〜2/12調査・15〜69歳男女13,200人) hba.beauty.hotpepper.jp
市場が縮んだのではなく、「選ばれるカテゴリ」と「離れられるカテゴリ」に分かれた。平均値を見て諦めるか、伸びている側に自店の居場所をつくるかは、店の情報設計しだいで変わる。
女性フェイシャルの内訳を見ると、1回あたり利用金額は7,582円で-4.6%、年間利用回数は4.57回で-11.6%——単価も回数も下がっています(出典①)。美容代の節約が迫られるなか、「なんとなく通っていた」利用から順に削られている構図です。一方、男性フェイシャルは前述の通り単価+7.2%・回数+15.5%と逆方向。同じフェイシャルというメニューでも、「誰に・何のために」提供するかによって、市場の風向きはまったく違います。
ここで効いてくるのが、店の「見え方」です。節約志向の利用者は、通う店を選び直すとき、検索し、口コミを読み、料金とメニューを比べます。そのとき「フェイシャルもボディも脱毛も、誰にでも」という総合的な打ち出しは、どの検討にも引っかかりにくい。逆に、「乾燥肌・敏感肌のフェイシャル専門」「メンズフェイシャルに対応」など、誰の・何のサロンかがひと目で分かる店は、その条件で探している人の候補に確実に入ります。二極化した市場では、市場全体の平均ではなく「自店が指名される検索・比較の土俵」を持てるかどうかが分かれ目になります。
データからの示唆を、着手すべき順に整理します。いずれも大きな投資より先にできる「情報設計」の話です。
市場全体の縮小は、個店の努力で止められるものではありません。しかし、どのカテゴリの・誰のためのサロンとして見つけてもらうかは、今日から設計できます。二極化の市場で選ばれる側に立つために、まず「外から見た自店」を整えることから始めるのが、データが示す順序です。
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