ネイルサロンの利用者は、いま静かに増えています。リクルート(ホットペッパービューティーアカデミー)の「美容センサス2026年上期」によれば、女性の1年以内利用率は9.2%(前年差+0.6pt)と、ここ5年で最高。一方で、女性の年間利用回数は5.67回(前年比-6.6%)、1回あたり利用金額は6,115円(同-2.5%)と、通う人1人あたりの支出は節約に向かっています。裾野は広がり、財布は締まる——この局面でネイルサロンの売上を左右するのは、新規の数ではなく、固定客の再来と「この人に任せたい」と指名される理由です。本記事では、その現在地を最新の大手調査データで整理します。
「美容センサス2026年上期【ネイルサロン編】」(2026年6月25日発表・人口20万人以上の都市に住む15〜69歳男女13,200人が対象)によれば、女性のネイルサロン1年以内利用率は9.2%。前年から+0.6pt伸び、ここ5年で最高の水準です。しかも、この伸びは特定の世代に偏ったものではなく、20代以外のほぼ全年代で前年を上回りました。ネイルが「若い人の特別なおしゃれ」から、幅広い年代の「暮らしの中の美容」へ広がりつつあることを示すデータです。
9.2%
女性のネイルサロン1年以内利用率(前年差+0.6pt)。ここ5年で最高となり、20代以外のほぼ全年代で前年超え
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期【ネイルサロン編】」(2026/6/25発表・2026/1/21〜2/12調査・人口20万人以上都市の15〜69歳男女13,200人)hba.beauty.hotpepper.jp
利用する人が増えているということは、これからネイルサロンを「初めて選ぶ」人、あるいは「久しぶりに選び直す」人が一定数いる、ということでもあります。入口の広がり自体は追い風です。問題は、その先です。
同じ調査で、女性の年間利用回数は5.67回(前年比-6.6%)、1回あたり利用金額は6,115円(同-2.5%)と、いずれも前年を下回りました。利用者は増えたのに、1人あたりの「回数×単価」は縮んでいる。その結果、ネイルサロンの市場規模は1,416億円(前年比-2.7%)と前年割れです。
ネイルサロン関連指標の前年比(マイナス側・2026年上期)
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期【ネイルサロン編】」(2026/6/25発表) hba.beauty.hotpepper.jp
これはネイルサロンだけの現象ではありません。同調査の「ポイント解説」によれば、美容サロン市場全体は2兆5,299億円(前年比-5.7%)と縮小し、利用が減った理由の1位は「美容代を節約する必要が出てきたため」。リクルートのプレスリリースでも、美容室市場は1兆3,063億円(-5.9%)と、理容室以外の全領域で前年割れが確認されています。生活防衛の意識が美容全体の財布を締めるなか、ネイルサロンの-2.7%は、美容室(-5.9%)や市場全体(-5.7%)より小さい落ち込みにとどまった、という見方もできます。
ネイルをやめたのではない。通う間隔を延ばし、1回の予算を絞りながら、それでも通い続けている——利用率が過去5年で最高であることが、その証拠と言えます。
見落とされがちなのが男性です。男性のネイルサロン1年以内利用率は4.4%と前年から横ばいでしたが、利用している男性の中身は変わっています。男性の年間利用回数は2.89回(前年比+6.3%)、店販(ケア用品などの店頭購入)の年間購入金額は10,596円(同+9.5%)。女性が回数・単価を絞るのと対照的に、男性は「通う頻度」と「サロンでの買い物」を増やしているのです。
2.89回
男性の年間利用回数(前年比+6.3%)。利用率4.4%は横ばいながら、店販購入金額も10,596円(+9.5%)と伸長
出典:リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2026年上期【ネイルサロン編】」(2026/6/25発表)hba.beauty.hotpepper.jp
身だしなみとしての爪ケアが定着しつつある男性客は、母数こそまだ小さいものの、通い始めると頻度と店販が伸びやすい層です。「女性向けのデザインサロン」という見え方のままでは、この層は入口で引き返してしまいます。メニュー名・写真・案内文で「男性のケアも歓迎」と分かるようにしておくことは、コストのかからない受け皿づくりです。
データを重ねると、ネイルサロンの置かれた状況はこう整理できます。利用者の裾野はここ5年で最も広く、しかし1人あたりは節約傾向。市場の縮小幅は美容の他領域より小さく、「間隔を延ばしながらも通い続ける」固定客に支えられている——。だとすれば、打ち手の中心は「新規を増やす」よりも、いま通ってくれている人の再来を切らさないことです。データからの示唆として、優先順位を整理します。
ネイルは、1回で完結しない「通う美容」です。利用者の裾野が過去5年で最も広がったいまは、固定客の土台を厚くするチャンスでもあります。1回の単価を追うのではなく、通い続けてもらう仕組みと、指名される理由を積み上げること——それが、市場が縮む局面でも数字を守るサロンと、静かに間隔を延ばされていくサロンを分けていきます。
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