美容室の経営は、しばしば「新規客をどう集めるか」に議論が集中します。しかし利用者の側を見ると、美容室選びの重心は明らかに「もう一度、同じ店へ」にあります。理容室・美容室で「毎回同じお店」を利用する人は62%(メディアシーク調べ・n=23,662)。一方で、行きつけをやめた理由の過半は「不満」ではありません。過当競争で新規獲得コストが上がるいま、利益を左右するのは、来た人に静かに通い続けてもらう「失客防止・再来」の設計です。本記事では、その現在地を大手調査で整理します。
スマートフォンアプリ「アイコニット」利用者2万3,662人に尋ねたメディアシークの調査(2024年9月)では、理容室・美容室を「毎回同じお店を利用する」と答えた人が62%。「いいえ」は22%、「どちらとも言えない」16%でした。3人に2人近くが、行きつけを固定しています。同じ店に通い続ける理由の1位は「自分の髪質や好みを理解してもらっているから」。次いで「料金が安いから」「通いやすいから」が続きました。価格や立地よりも先に、「私のことを分かっている」という関係が固定客をつくっています。
62%
理容室・美容室で「毎回同じお店を利用する」と答えた人の割合。理由の1位は「髪質や好みを理解してもらっているから」
出典:メディアシーク「『美容室』に関するアンケート調査」(2024/9・アイコニット内調査・有効回答23,662名)prtimes.jp
裏を返せば、美容室の売上の土台は「新規の数」ではなく「固定客がどれだけ残るか」で決まります。新規は入口にすぎず、多くの利用者にとってのゴールは「通える店を1つ決める」こと。だからこそ、せっかく来た新規客を固定客に育てられるか、そして育った固定客を失わずにいられるかが、経営の分かれ目になります。
では、通っていた美容室から足が遠のくとき、何が起きているのでしょうか。美容室口コミサイト「ヘアログ」を運営するノーマリズムが、行きつけの美容室をやめた人に理由を尋ねた調査(2021年・n=100)では、1位は「美容室や美容師に対する不満」43%。しかし残りに目を向けると、「引っ越しなど自分都合(生活環境の変化)」38%、「担当美容師の異動・退職」19%——この2つを合わせた57%は、不満以外の理由でした。
行きつけの美容室をやめたきっかけ(n=100)
出典:ノーマリズム(美容室口コミサイト「ヘアログ」)「行きつけ美容室をやめた理由のアンケート調査」(2021/10・n=100) dreamnews.jp
つまり、失客の多くは決定的なクレームや事件ではなく、生活が変わり、担当者がいなくなり、通う理由が静かに薄れていく形で起こります。とくに「担当者の異動・退職」で19%が離れる構図は、美容室に固有のリスクです。お客様が信頼しているのは店そのものだけでなく「担当の人」でもあるため、その人がいなくなると関係ごと途切れやすい。担当交代のタイミングは、失客の危険水域だと言えます。
去っていく固定客の過半は、お店を嫌いになったのではない。生活が変わり、担当者が変わり、思い出す理由が薄れる——それだけで、足は遠のく。
再来してもらうために、どの場面が効くのか。リクルート(ホットペッパービューティーアカデミー)が過去1年に美容室を利用した20〜59歳男女2,600人へ行った「美容サロン顧客満足調査2023」では、次回も同じ店に行くと決めるタイミングとして「来店前」に再来を決めている人が女性24.0%・男性32.3%にのぼりました。施術の出来だけでなく、予約のしやすさや口コミの評判といった「行く前」の体験が、すでに再来の意思を左右しているということです。
24.0%
女性が「来店前」の段階で再来を決めている割合(男性は32.3%)。ネット予約のしやすさ・口コミの評判が上位
出典:リクルート「美容サロン顧客満足調査2023」(2023/9・過去1年に美容室を利用した20〜59歳男女・のべ2,600人)prtimes.jp
同じ傾向は、サロンを変えた経験がある女性300人への調査(ホットペッパービューティーアカデミー・2024年2月)でも確認できます。ヘアサロンで再来・変更を決めるタイミングのうち27.7%は「来店前」。来店してからの接客で挽回する前に、勝負の一部は「調べる・比べる」段階で決まっています。求職者が会社を調べるように、お客様もネット予約のとりやすさ、口コミ、料金の分かりやすさで店を値踏みしている——その入口を整えることが、再来率の底上げになります。
そして同じリクルートの調査は、「会計」の重要度が前回2021年調査から上昇していることを示しました。来店〜会計〜帰宅までの場面で満足につながる要素の1位は「料金が明確で分かりやすい」。キャッシュレスやオンライン決済が広がり、ストレスのない会計が満足と再来を左右する要素になっています。仕上がりの良さ(満足度の高い場面は「仕上がり確認」「施術」「カウンセリング」が上位)はもちろん前提ですが、最後の会計の一瞬までが再来の判断材料になっている、ということです。
ここまでのデータは、美容室のリピートが「技術の満足」だけで決まるわけではないことを示しています。62%が同じ店を選び、失客の過半は不満以外、再来の意思は来店前と会計時に固まる。だとすれば、打ち手はおのずと絞られます。データからの示唆として、優先順位を整理します。
お客様は、顧客であると同時に「調べて、比べて、選ぶ」生活者です。募集を出しても応募が来ない採用の悩みと同じで、美容室のリピートも「良い施術をしていれば自然に続く」ものではなくなりました。技術で満足させることと、その関係を切らさない仕組みを持つこと——この両輪が、過当競争のなかで「通い続けてもらえる店」と「静かに失っていく店」を分けていきます。
その新規客は、
「もう一度」来ていますか?
ネット予約・口コミ・料金の見え方から、会計後に再来を促す接点まで。お客様が「通い続ける理由」を持てているかを、失客防止の観点で無料で診断し、優先順位をレポートにしてお届けします。