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介護・福祉 / 採用と職場の見え方

求人倍率14倍——介護の働き手は、
応募前に職場を“見て”いる。

Nest Lab介護・福祉 / 採用と職場の見え方2026.07.10出典4件

訪問介護職の有効求人倍率は14.14倍

介護の現場では、「募集を出しても応募が来ない」が日常になりつつあります。訪問介護職の有効求人倍率は14.14倍、施設介護員でも3.29倍(いずれも2023年度)。全職業平均の1.29倍とはまったく違う水準で、働き手の側が職場を選ぶ構図です。そして求職者は、応募する前に職場を“見て”います。応募者の86.0%が就職前に採用サイトを確認したという調査(n=101・2022年)がある一方、ホームページで求職者へ発信している介護事業所は37.2%、SNSでの発信は14.8%にとどまります。本記事では、「採れない」時代の介護採用を、職場の“見える化”という観点から公的統計と調査で整理します。

訪問介護14.14倍——働き手が、職場を選ぶ側にいる。

まず、介護採用の現在地を数字で確認します。厚生労働省の職業安定業務統計によると、2023年度の有効求人倍率は訪問介護職で14.14倍施設介護員で3.29倍でした。有効求人倍率は「求職者1人に対して、求人が何件あるか」を表す指標です。訪問介護職では、仕事を探す1人に対して14件を超える求人が並んでいる計算になります。

14.14

訪問介護職の有効求人倍率(2023年度)。施設介護員は3.29倍、全職業平均は1.29倍

出典:厚生労働省「職業安定業務統計」(社会保障審議会・介護給付費分科会 2024/9/12資料)mhlw.go.jp

同じ2023年度の全職業平均は1.29倍です。並べてみると、介護の職種——とりわけ訪問介護——では、事業所が応募者を選ぶのではなく、働き手が職場を選ぶ市場になっていることがわかります。募集をかけて待つだけでは、そもそも比較の候補に入れてもらえない可能性がある、ということです。

有効求人倍率の比較(2023年度)

訪問介護職14.14倍
施設介護員3.29倍
全職業平均1.29倍

出典:厚生労働省「職業安定業務統計」(介護給付費分科会 2024/9/12資料)・「一般職業紹介状況(令和5年度)」 mhlw.go.jp / mhlw.go.jp

「辞められる」より「採れない」——離職率はむしろ下がっている。

「介護は辞める人が多いから人が足りない」と語られがちですが、直近のデータはやや違う姿を示しています。全国の介護事業所を対象にした介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(回答8,978事業所)では、介護職の離職率は12.4%と2年連続で低下しました。一方で、採用率も14.3%に低下しています。辞める人が増えているのではなく、入ってくる人が細っている——つまり課題の重心は「定着」から「採用」へ移りつつあります。

あわせて見ておきたいのが、働き手が職場の何を気にしているかです。同調査では、中途採用者が前職を辞めた理由の1位は「職場の人間関係」(24.7%)でした。給与や労働時間だけでなく、職場の中身——誰と、どんな雰囲気で働くのか——が、介護の仕事選びの重要な判断材料になっていることがうかがえます。

応募者の86%は、採用サイトを確認してから来る。

では、求職者は応募の前に何をしているのでしょうか。採用サイト作成サービス「トルー」を運営するダトラの調査(2022年公表・n=101)では、応募者の86.0%が就職前に採用サイトを確認していたと回答しています。標本数が小さい調査のためあくまで補強データですが、「求人票だけを見て応募する」のではなく、「職場の情報を確かめてから応募する」行動がうかがえます。

86.0%

就職前に採用サイトを確認した応募者の割合(n=101・2022年調査・補強データ)

出典:ダトラ「トルー」調査(2022/6公表・n=101)prtimes.jp

同じ調査では、就職前の不安として最も多かったのは「職場の雰囲気がわからない」(70.5%)でした。条件面の情報は求人票にも載ります。しかし「どんな人が働いていて、どんな空気の職場なのか」は、事業所が自分で見せない限り、応募を考えている人には届きません。

70.5%

就職前の不安の1位「職場の雰囲気がわからない」(n=101・2022年調査)

出典:ダトラ「トルー」調査(2022/6公表・n=101)prtimes.jp

事業所の発信は、ハローワーク中心のまま。

一方、事業所側の採用活動はどうでしょうか。前述の介護労働実態調査(回答8,978事業所)によると、採用活動の中心はハローワークの活用(66.9%)知人などへの紹介依頼(65.6%)です。それ自体は堅実な手段ですが、ホームページを通じて求職者へ発信している事業所は37.2%SNSでの発信は14.8%にとどまります。

介護事業所の採用活動・情報発信(回答8,978事業所)

ハローワークの活用66.9%
知人等への紹介依頼65.6%
HPで求職者へ発信37.2%
SNSでの発信14.8%

出典:介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(2025/7公表・回答8,978事業所) kaigo-center.or.jp

働き手が職場を選ぶ倍率のなかで、応募者は職場の中身を見ようとし、事業所側の発信はまだ少ない。両者のあいだに、「情報が届かないことによる機会のずれ」が生まれている。

求職者が確かめたいのは職場の雰囲気なのに、その情報を出している事業所は多数派ではない——このずれは、裏を返せば、先に職場を見せた事業所から順に、応募を考えている人へ情報が届くということでもあります。求人媒体への出稿額を競う話ではなく、いまある職場のありのままを、見える場所に置くことから始められます。

対策の優先順位——職場を「見える」ようにする。

ここまでのデータを踏まえると、介護採用で最初に手をつけるべきは、求人票の外側にある「職場の見える化」です。データからの示唆として、優先順位を整理します。

  1. 仕事内容を具体的に書く。サービス種別(訪問・通所など)、1日の流れ、どんな利用者とどう関わるのか。求人票の定型文では伝わらない部分を、自分の言葉で補う。
  2. 職場の雰囲気が伝わる写真を載せる。働いているスタッフや事業所の日常の様子は、不安の1位「職場の雰囲気がわからない」(70.5%)への最も直接的な答えになる。
  3. 研修・サポート体制を明示する。未経験からの育成や資格取得の支援など、「入ったあとの見通し」を示すことは、応募をためらっている人の背中を押す情報になる。
  4. 採用ページ(採用サイト)に情報を集約する。応募者の多くが確認しに来る場所(86.0%・n=101)に、上の3つをまとめて置き、更新を止めない。
  5. ハローワーク・紹介と発信を組み合わせる。中心手段(ハローワーク66.9%・紹介65.6%)を置き換えるのではなく、そこで職場を知った人も「検索して確かめる」前提で受け皿を整える。

要点はシンプルです。訪問介護職14.14倍という数字が示すとおり、介護の採用は「選ぶ」のではなく「選ばれる」市場になっています。そして働き手は、応募する前に職場を見ようとしています。職場の見える化は特別な施策ではなく、いま自分の職場に関心を持ってくれた人に、判断できるだけの情報を届けるための基本の整備です。

Sources / 出典

  1. 厚生労働省「職業安定業務統計」(社会保障審議会・介護給付費分科会 2024/9/12資料・有効求人倍率=訪問介護職14.14倍/施設介護員3.29倍=いずれも2023年度・2026-07-10閲覧) — https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001303387.pdf
  2. 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年度分)」(全職業平均の有効求人倍率1.29倍=2023年度・2026-07-10閲覧) — https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39833.html
  3. ダトラ「トルー」調査(2022/6/16公表・n=101・応募者の86.0%が就職前に採用サイトを確認/就職前の不安1位「職場の雰囲気がわからない」70.5%・標本数が小さいため補強データ扱い・2026-07-10閲覧) — https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000033208.html
  4. 介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(2025/7/28公表・回答8,978事業所・採用活動=ハローワーク66.9%/紹介依頼65.6%/HPで求職者へ発信37.2%/SNS発信14.8%・離職率12.4%(2年連続低下)/採用率14.3%・中途採用者の前職離職理由1位「職場の人間関係」24.7%・2026-07-10閲覧) — https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf

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