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業種データ / 介護・福祉 まず読む1本

市場は拡大している。
なのに、退出は過去最多。

Nest Lab業種データ / 介護・福祉2026.07.13出典8件

2025年の介護事業者の倒産は176件・休廃業653件で過去最多、介護保険給付の費用額は11兆7,186億円に拡大

介護保険給付の費用額は、令和5年度に11兆7,186億円(前年度比+3.0%)。要介護(要支援)認定を受けた人は708万人と前年度から14万人増えました。障がい福祉サービス等の総費用額も2024年度に約4.2兆円(+12.1%)へ拡大しています。ところが同じころ、2025年の介護事業者の倒産は176件、休廃業・解散は653件——いずれも過去最多となり、合わせて829事業者が市場から退出しました(東京商工リサーチ集計)。利用は広がっているのに、退出は最多。その差を分けているのは「選ばれ方」です。デイサービス・訪問介護・障がい福祉(就労支援・放課後等デイサービス)・介護施設を運営する中小事業者の出発点として、公表データを整理します。

いま、介護・福祉で起きていること——「広がる利用」と「過去最多の退出」の同時進行。

まず、市場の側です。厚生労働省「令和5年度介護保険事業状況報告(年報)」によると、介護保険給付の費用額は11兆7,186億円で前年度比+3.0%、要介護(要支援)認定者は708万人(+14万人)。障がい福祉の分野も、厚労省報告(介護ニュースJoint報道より・二次)によれば障害福祉サービス等の総費用額が2024年度に約4.2兆円(+12.1%)と急拡大し、伸びが最も大きいのは就労継続支援B型(+20.1%)でした。事業所の数で見ても、放課後等デイサービスは全国21,122か所(前年比+8.8%)、月間の利用者は55.7万人、就労継続支援B型の利用者は46.1万人にのぼります(厚労省「令和5年社会福祉施設等調査」)。利用する人も、使われる費用も、増え続けている分野です。

一方で、退出も過去最多を更新しました。東京商工リサーチの集計では、2025年の介護事業者の倒産は176件(前年比+2.3%)で過去最多。うち訪問介護が91件(+12.3%)と3年連続で最多を占めました。原因の内訳は売上不振が140件(79.5%)と大半で、人手不足関連も29件(+45.0%)と大きく増えています。倒産に至らない退出はさらに多く、同社の集計で2025年の休廃業・解散は653件(+6.6%)と過去最多。うち訪問介護が465件、通所・短期入所も95件(+35.7%)でした。倒産と合わせると、829の介護事業者が1年で市場から退出したことになります。

利用が広がっているのに、退出は史上最多——。この二つの数字が同時に成り立つのは、増えた利用がすべての事業所に均等には配られていないからです。倒産原因の79.5%を占めた売上不振は、多くの場合「利用者が集まらなかった」ことを意味します。地域に必要とされるサービスを提供していても、その情報が探している人に届いていなければ、選ばれる場面に立てない。ここで起きているのは、事業所の価値の問題ではなく、情報が届かないことによる機会のずれです。

数字で見る、介護・福祉の現在地。

介護・福祉の事業環境を、公表データで並べます(統計ごとに対象・年次が異なる点にご注意ください)。

11.7兆円

介護保険給付の費用額は11兆7,186億円(令和5年度・前年度比+3.0%)。要介護(要支援)認定者は708万人(+14万人)

出典:厚生労働省「令和5年度介護保険事業状況報告(年報)のポイント」(2026-07-13閲覧)mhlw.go.jp

176

2025年の介護事業者の倒産は176件(+2.3%)で過去最多。うち訪問介護91件(3年連続最多)。原因は売上不振140件(79.5%)、人手不足関連29件(+45.0%)

出典:東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』の倒産動向」(2026/1)tsr-net.co.jp

653

2025年の介護事業者の休廃業・解散は653件(+6.6%)で過去最多。うち訪問介護465件・通所/短期入所95件(+35.7%)。倒産との合計829事業者が退出

出典:東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』の休廃業・解散動向」(2026/1)tsr-net.co.jp

人手が「不足」と答えた介護事業所の割合(令和6年度・調査回答事業所)

訪問介護員83.4%
介護職員69.1%
従業員全体65.2%

出典:介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(2025/7・2026-07-13閲覧) kaigo-center.or.jp

介護労働安定センターの令和6年度調査(回答事業所ベース)では、事業所の65.2%が人手の「不足」を感じ、訪問介護員では83.4%にのぼります。しかも、調査対象の7職種すべてで不足感が前年度より悪化しました。人手の確保は、特定の事業形態だけでなく、調査に回答した介護事業所の全体で厳しさを増しています。

272万人

2040年度に必要とされる介護職員数は約272万人(2022年度比+約57万人)。2026年度時点でも約240万人(+約25万人)が必要

出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」(2024/7)mhlw.go.jp

厚労省の推計では、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人が必要とされます。2022年度と比べてそれぞれ約25万人・約57万人の上積みです。働き手の確保が長期にわたる大きなテーマである以上、1つの事業所の視点では「働く人から選ばれること」が、そのまま事業を続けるための条件になっていきます。

この数字が意味すること——「選ばれ方」は、二つある。

介護・福祉の事業者にとって、「選ばれ方」は一つではありません。デイサービス・訪問介護・障がい福祉・介護施設のいずれでも、事業の継続は「ご家族・利用者から選ばれること」と「働く人から選ばれること」の両方で決まります。2025年の介護事業者の倒産(東京商工リサーチ集計)で、原因の79.5%を占めた売上不振は前者の、+45.0%と急増した人手不足関連は後者の課題を映しています。以下、二つに分けて整理します。

①ご家族・利用者からの選ばれ方——情報が届かないことによる機会のずれ。

介護・福祉のサービスは、選ぶ人が複数います。デイサービスや介護施設ならご本人に加えてご家族とケアマネジャー、就労支援や放課後等デイサービスなら保護者やご本人が、地域の中から事業所を比べて選びます。その比べる入口は、紹介や口頭の情報だけでなく、検索・地図・事業所のホームページ・クチコミへと広がっています。

ここで思い出したいのが、先ほどの数字です。2025年に倒産した介護事業者の79.5%は売上不振、つまり利用者が集まらなかったことが理由でした(東京商工リサーチ集計)。丁寧なケアを提供していても、空き状況・送迎の範囲・施設の雰囲気・スタッフの様子といった情報がネット上で見えなければ、比べられる場面で候補に入らない。これは事業所の価値の問題ではなく、情報が届いていないことによる機会のずれです。

選択肢が増えるほど、この差は出やすくなります。たとえば放課後等デイサービスは全国21,122か所と前年から8.8%増加(厚労省「令和5年社会福祉施設等調査」)。同じ地域の中で複数の事業所が比べられる場面は、今後も増えていきます。「名前や地域で調べたときに、正確で新しい情報が出てくること」自体が、比較の土俵に上がるための条件になりつつあります。

②働く人からの選ばれ方——採用の入口にも、事業所の情報。

もう一つの「選ばれ方」は、働く人からです。令和6年度介護労働実態調査(回答事業所)では65.2%が人手の不足を感じ、訪問介護員では83.4%。7職種すべてで不足感が前年度より悪化しました。そして厚労省の推計では、介護職員の必要数は2040年度に約272万人(2022年度比+約57万人)。働き手の確保は、一時的な波ではなく長期の構造です。

この構造は、すでに退出の理由にも表れています。2025年の介護事業者の倒産のうち、人手不足関連は29件と前年から45.0%増(東京商工リサーチ集計)。人が集まらないことが、そのまま事業を続けられない理由になり始めています。

そして求職者もまた、応募の前に事業所の名前で検索し、ホームページ・地図・クチコミ・SNSで職場の様子を確かめる時代です。職場の雰囲気やスタッフの声が見える事業所と、情報がほとんど見つからない事業所では、応募の入口で差が生まれます。ご家族向けに整えた「中の様子が見える情報」は、そのまま求職者への発信にもなる——二つの選ばれ方は、同じ土台の上にあります

市場の拡大は、すべての事業所に均等には配られない。広がる利用と限られた働き手は、「情報が見える事業所」に集まっていく。

そして、探し方そのものが「AIに聞く」へ動き始めている。

いま起きているもう一つの変化が、探し方そのものです。検索で生成AIを使う人は37.0%という調査があります。※介護・福祉だけを対象にした調査ではなく、全国10〜60代9,278名を対象にした、業種を問わない検索行動の調査です。「〇〇市 デイサービス 空き」「近くの 放課後等デイサービス 見学」のようにAIへ尋ねる人が現れ、AIの回答が比較の入口になる場面が出始めています。

37.0%

検索での生成AI利用率(全国10〜60代9,278名・業種を問わない一般調査)。介護・福祉に限った数値ではない

出典:CyberAgent「GEOラボ」第三弾(業種を問わない検索行動の調査)cyberagent.co.jp

AIの回答は、事業所の地図情報・ホームページ・クチコミ・第三者の言及を材料に組み立てられることがあります。だから、ご家族・利用者と働く人に向けて情報を整えることは、そのまま「AIに引用・推薦されやすい材料を整えること」にもつながります。

データから導く、対策の優先順位。

この構図を踏まえると、デイサービス・訪問介護・障がい福祉・介護施設の中小事業者の打ち手には、優先順位をつけられます。

  1. 事業所情報の基本整備(Googleビジネスプロフィール・ホームページ)——名称・所在地・連絡先・サービス種別(通所/訪問/就労支援/放課後等デイ等)・営業日・空き情報を正確にそろえる。ご家族もケアマネジャーも求職者も、まず名前と地域で検索する。
  2. 「中の様子」が見える発信——写真・1日の流れ・スタッフ紹介・行事の記録。見学前の不安と応募前の不安を同時に減らす、二つの選ばれ方に共通する土台。利用者が写る写真はご本人・ご家族の同意を前提に。
  3. クチコミ・利用者の声の運用——投稿への丁寧な返信で事業所の姿勢を示し、プライバシーへの配慮を前提に第三者の声を積み重ねる。
  4. 採用情報の自前の入口——ハローワークや紹介と併せて、事業所自身の言葉で職場を伝える採用ページを持つ。人手不足関連の倒産が増えるなか、採用は集客と並ぶ経営テーマになっている。
  5. AIに引用・推薦されやすい材料づくり(GEO/AIO)——正確な事業所情報・クチコミ・第三者の言及は、生成AIの回答の材料にもなる。1〜4の積み重ねが、新しい探し方への備えになる。

まとめ——この業界の「選ばれ方」をひとことで言うと。

介護保険給付は11.7兆円、障がい福祉サービスの総費用は約4.2兆円へと利用は広がっているのに、2025年の介護事業者の倒産176件・休廃業653件は過去最多だった。差を分けるのは「ご家族・利用者から」と「働く人から」——二つの選ばれ方であり、事業所情報・中の様子が見える発信・クチコミの整備が、規模を問わずその土台になる。

Sources / 出典

  1. 厚生労働省「令和5年度介護保険事業状況報告(年報)のポイント」(介護保険給付の費用額11兆7,186億円・前年度比+3.0%・要介護(要支援)認定者708万人/2026-07-13閲覧) — https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/23/dl/r05_point.pdf
  2. 厚生労働省報告「障害福祉サービス等の総費用額」(2024年度約4.2兆円・+12.1%・就労継続支援B型+20.1%。介護ニュースJoint報道より・二次/2026-07-13閲覧) — https://www.joint-kaigo.com/articles/41240/
  3. 厚生労働省「令和5年社会福祉施設等調査」(放課後等デイサービス21,122か所・前年比+8.8%・月間利用55.7万人/就労継続支援B型の利用46.1万人/2026-07-13閲覧) — https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/23/dl/kekka-kihonhyou02.pdf
  4. 東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』の倒産動向」(2026/1/9公表・倒産176件で過去最多・訪問介護91件・売上不振140件(79.5%)・人手不足関連29件(+45.0%)/2026-07-13閲覧) — https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202283_1527.html
  5. 東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』の休廃業・解散動向」(2026/1/23公表・653件で過去最多・訪問介護465件・通所/短期入所95件・倒産と合計829件が退出/2026-07-13閲覧) — https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202326_1527.html
  6. 介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(2025/7/28公表・回答事業所の65.2%が人手「不足」・訪問介護員83.4%・介護職員69.1%・7職種すべて前年度より悪化/2026-07-13閲覧) — https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf
  7. 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024/7/12公表・2026年度約240万人(2022年度比+約25万人)・2040年度約272万人(+約57万人)/2026-07-13閲覧) — https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41379.html
  8. CyberAgent「GEOラボ」第三弾(2026/3/5公表・検索での生成AI利用率37.0%・全国10〜60代9,278名・業種を問わない検索行動の一般調査/2026-07-13閲覧) — https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=33041

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