人手不足がすべての業種で最も深刻な分野のひとつが、建設業です。正社員が「不足している」と答えた建設業の企業は70.4%で全業種の中で最も高く、2025年度の人手不足倒産112件も建設業が業種別で最多でした。就業者はピーク時の約7割にあたる477万人まで減り、その36.7%が55歳以上、29歳以下はわずか11.7%。ここに2024年4月からの時間外労働の上限規制が重なります。本記事では、建設業の採用をめぐる現在地を、国土交通省など公的データで整理します。
帝国データバンクが全国1万1,014社から回答を得た調査(2025年1月)によると、正社員が「不足している」と感じている建設業の企業は70.4%。情報サービス業(72.5%)に次ぐ高さで、全体(53.4%)を大きく上回ります。そして人手不足の行き着く先である倒産でも、建設業は突出しています。
70.4%
正社員が「不足している」と感じている建設業の企業の割合。全体(53.4%)を大きく上回る高水準
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」(2025/2・有効回答1万1,014社)tdb.co.jp
帝国データバンクによると、2025年度の人手不足倒産は全体で441件と3年連続の過去最多を更新しました。その内訳を業種別に見ると、建設業が112件(全体の25.4%)で最多。2位の道路貨物運送業(55件)の約2倍にあたります。「仕事はあるのに、続ける人がいない」——建設業では、そうした形の倒産が最も多く積み上がっています。
2025年度の人手不足倒産(業種別・上位)
出典:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」(2026/4発表) tdb.co.jp
なぜ建設業だけ、これほど深刻なのか。答えは、担い手の年齢構成にあります。
建設業の就業者は、1997年のピーク(685万人)から2024年には477万人へと、約3割減りました。問題は総数だけではありません。国土交通省の白書によると、就業者に占める55歳以上の割合は36.7%(全産業32.4%)と高く、一方で29歳以下は11.7%(全産業16.9%)にとどまります。技術を担ってきたベテランが引退期に入る一方で、次の世代が入ってこない。年齢構成が上に偏った、典型的な高齢化業種です。
就業者の年齢構成——建設業 vs 全産業(2024年)
出典:国土交通省「令和6年度 国土交通白書」(総務省「労働力調査」/2026-07-07閲覧) mlit.go.jp
ベテランが持つ技術・段取り・現場の勘は、一朝一夕には引き継げません。若手の入職が細ったまま高齢化が進めば、いま現場を支えている技能そのものが失われていきます。採用は「頭数を揃える」話ではなく、技術を次世代へ渡せるかどうかという、事業継続の問題になっています。
この採用難に、働き方の見直しが重なります。建設業には猶予されてきた時間外労働の上限規制が、2024年4月から適用されました(原則、月45時間・年360時間)。背景には、建設業の長時間労働があります。国土交通省の白書によると、建設業の年間平均労働時間は2,018時間(2023年度)で、他産業より62時間ほど長い水準です。
2,018時間
建設業の年間平均労働時間(2023年度)。他産業より62時間ほど長く、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用
出典:国土交通省「令和6年度 国土交通白書」(厚生労働省「毎月勤労統計調査」等/2026-07-07閲覧)mlit.go.jp
休みの取りやすさも、他産業に見劣りします。同白書によると、週休2日(4週8休以上)の導入は、公共工事では約3〜4割まで進んだ一方、民間工事では約1割強にとどまります。給与面でも、建設業生産労働者の年間平均賃金は432万円で、全産業(508万円)を下回ります。「休みが少なく、給与も高くない」という見え方は、若手を遠ざける要因になりかねません。規制対応で労働時間を減らしながら、処遇と働きやすさをどう改善し、それをどう伝えるか——採用は、この一連の取り組みと切り離せなくなっています。
人手不足・高齢化・労働時間規制。三つが同時に効いている建設業では、採用は人事の実務ではなく、技術の継承と事業継続に関わる経営問題になっています。
では、何を変えれば人が集まるのか。手がかりは、求職者の行動にあります。リクルートマネジメントソリューションズが大学4年生・大学院2年生1,117名に行った調査(2023年11月)では、入社予定企業との接点を望む理由として「社風や職場の雰囲気について知りたい」が38.5%、「仕事内容や進め方を知りたい」が38.0%と上位に並びました。求職者は待遇の数字だけでなく、「どんな人が、どんな現場で、どう働いているか」を知ったうえで応募先を選んでいます。
入社予定企業との接点を望む理由(学生・上位)
出典:リクルートマネジメントソリューションズ「2024年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査」(2023/11・回答1,117名) recruit-ms.co.jp
建設業の仕事は、外からは中身が見えにくい職種です。実際の現場、扱う技術、働く人の姿——それらが求人票の条件だけでは伝わりません。だからこそ、同じ求人条件でも「会社の見せ方」で応募は変わり得ます。求職者が知りたがっている職場の雰囲気や仕事内容を、自社のWebサイト・SNS・動画で具体的に見せられているか。募集を出しても応募が来ない状態は、集客に置き換えれば「検索しても情報が出てこない」「比較で選ばれていない」状態に近いといえます。
ここまでのデータが示すのは、建設業の採用が求人媒体への出稿だけで完結する時代ではない、ということです。技術の継承と事業の存続がかかる以上、職場の中身を整える取り組みと、その魅力を求職者に届ける発信を、集客と同じ真剣さで設計する価値があります。以下に、データからの示唆として優先順位を整理します。
建設業の採用難は一度に解決しません。だからこそ、着手する順番が重要です。ここまでの公的データを踏まえ、優先度の高いものから整理します。
その「人が採れない」、
現場の見せ方で変わります。
求職者が知りたいのは、現場・人・技術です。いまの求人・採用ページ・クチコミが求職者にどう見えているかを無料で診断し、応募につながる発信の優先順位をレポートにしてお届けします。