家を建てる、リフォームする——それは多くの人にとって人生で最も高額で、何度もない買い物です。だからこそ施主は、契約する前に念入りに調べます。国土交通省の調査では、注文住宅を建てた世帯の78.6%がインターネットで情報を集めていました。そして工務店選びの決め手になったホームページのコンテンツは、「施工事例」が56.8%で1位。高額・低頻度の買い物ほど、「事例」と「顔の見える情報」が意思決定を左右します。本記事では、その現在地を公的データと大手調査で整理します。
家づくりの入り口は、いまやほぼ検索から始まります。国土交通省が全国・三大都市圏の取得世帯を対象に実施した「令和6年度 住宅市場動向調査」(2025年6月公表)によると、住宅取得の過程で「インターネットを通じた情報収集」を行った世帯は、注文住宅で78.6%。分譲マンション(分譲集合住宅)では82.2%に達し、いずれも情報収集手段として最も多い方法でした。
78.6%
注文住宅を取得した世帯のうち、インターネットで情報収集を行った割合(全国)。情報収集手段として最多
出典:国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査 報告書」(2025/6公表・注文住宅は全国調査)mlit.go.jp
この傾向は住宅の種類を問いません。新築(注文・分譲)から中古、賃貸まで、すべての住宅種別で「インターネットを通じた情報収集」が情報入手手段の1位でした。持ち家取得の各層を並べると、次のようになります。
住宅取得世帯のインターネット情報収集率(住宅種別・令和6年度)
出典:国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査 報告書」(2025/6公表) mlit.go.jp
同調査の経年比較でも、物件・施工者に関する情報収集は直近5年間でインターネット利用が大きく増加しています。住宅展示場やチラシが入り口だった時代から、「まず検索して、Webで比べる」時代へ——施主の行動は、すでに移り終えています。着工前に検索されたとき自社の情報が出てこなければ、そもそも比較の土俵に上がれません。
では、施主はWebで何を見て会社を選ぶのか。直近3年以内に注文住宅の購入を決めた人への調査(UNIIDEO・2022年6月公表)では、工務店選びの決め手になったホームページのコンテンツの1位は「施工事例」で56.8%。2位が「性能や構造の紹介」(41.9%)、続いて「お客様の声」「家づくりの考え方」(ともに37.8%)でした。カタログスペックよりも先に、実際に建てた家の写真=事例が信頼の入り口になっています。
工務店選びの決め手になったホームページのコンテンツ(複数回答)
出典:UNIIDEO「注文住宅の工務店選びに関する実態調査」(2022/6公表・注文住宅購入者111名) prtimes.jp
同調査では、Webの情報を参考にした人が69.4%。さらに35.2%が「情報収集の段階で依頼先を決めていた」と回答しています。つまり施主の3人に1人は、直接会う前・見積りを取る前のネットで調べている段階で、心の中の第一候補を決めているということです。事例の見せ方が、その後の商談の入り口を左右します。
56.8%
工務店選びの決め手になったホームページのコンテンツ1位=「施工事例」。2位「性能や構造」を15ポイント上回る
出典:UNIIDEO「注文住宅の工務店選びに関する実態調査」(2022/6公表)prtimes.jp
探し方そのものにも、Webは深く入り込んでいます。アットホームが過去2年以内の注文住宅購入者400名に聞いた調査(2024年6月実施)では、依頼先の探し方は「住宅展示場を訪問」(54.0%)に次いで「ホームページから探す」が34.3%で3位。展示場に足を運ぶ人でも、その前後で必ずと言っていいほど会社のサイトを確認しています。同調査では79.5%が「その会社のこだわり・コンセプトに共感した」と回答しており、施工事例と併せて「どんな家を、どんな考えで建てる会社か」が伝わっているかどうかが問われています。
施主が最初に開くのは、価格表ではなく施工事例のページ。写真と実績で「この会社なら任せられそうだ」と感じてもらえるかが、商談の前段階で勝負を分けている。
家づくりが特別なのは、その金額と頻度です。多くの人にとって一生に一度か二度、しかも数百万〜数千万円がかかる。失敗が許されないからこそ、施主は複数の会社を並べて比較します。前出のアットホーム調査では、注文住宅購入者が見積りを依頼した会社は平均2.5社。1社だけで決めた人は34.5%にとどまり、過半数が2社以上を比較していました。
2.5社
注文住宅購入者が見積りを依頼した会社数の平均。1社のみで決めた人は34.5%で、過半数が複数社を比較
出典:アットホーム「注文住宅購入者の実態調査」(2024/6実施・購入者400名)athome.co.jp
リフォームでも構図は同じです。リフォーム経験者1,000名への調査(ローカルワークス・2022年12月公表)では、業者選びで「困った」経験を持つ人は8割近く。困った内容の1位は「相場がわからない」で47%でした。そして「業者選びに失敗した」と感じた人が次回に気をつけたいこととして最も多く挙げたのが、「たくさん相見積もりをとる」(35%)。金額と品質の妥当性を、施主は自分では判断しづらい。だから複数社を比べて相場観をつかもうとするのです。
別のリフォーム経験者調査(リショップナビ)でも、「複数業者を比較するべきだった」と考える人は78.3%にのぼり、選定時の不安は「金額が妥当かわからない」(46.7%)が最多でした。裏を返せば、施工事例で品質を示し、価格帯の目安や考え方をサイト上で誠実に開示している会社は、この「比べて選ばれる」局面で有利になります。情報を出し惜しみすると、相見積りの比較検討から静かに外れていきます。
ここまでのデータは、建築・リフォーム会社にとっての打ち手の順番を示しています。「Webに凝る」ことが目的ではなく、施主が着工前に確認する情報を、過不足なく整えることがゴールです。
共通するのは、広告で無理に押し込むより先に、「施主が自分で調べて、比べて、納得して選ぶ」プロセスに正しく情報を置くことです。高額で一生に何度もない買い物だからこそ、施主は慎重に事例と信頼を確かめます。そこに応える情報を整えることは、集客と同じ真剣さで取り組む価値のある経営課題です。
その施工事例、
施主に届いていますか。
着工前の施主が調べたとき、自社の施工事例・価格帯・信頼が伝わっているか。建築・リフォームの観点から、いまのWebの見られ方を無料で診断し、優先順位をレポートにしてお届けします。