言葉が通じない国を旅するとき、人は何を頼りにするでしょうか。答えは、手のなかのスマートフォンです。日本を訪れた外国人が「滞在中に役に立った」と答えた情報源は、スマートフォンが89.5%で圧倒的な1位。観光案内所もガイドブックも、もはや比較になりません。訪日客は、スマホで地図を開き、クチコミを読み、店を選んでいます。
観光庁の「インバウンド消費動向調査」(2024年・全国籍/地域)によると、日本滞在中に役に立った旅行情報源は「スマートフォン」が89.5%で群を抜いています。2位の「観光案内所」(13.3%)、3位の「パソコン・タブレット」(9.7%)を大きく引き離し、旅行ガイドブック(4.0%)はわずか1ケタ台。旅の現場での情報収集は、ほぼスマホに一本化されているのが現実です。
89.5%
訪日客が「日本滞在中に役に立った」と答えた情報源=スマートフォン(圧倒的1位)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年 年次報告書」(全国籍・地域・複数回答/p.24)mlit.go.jp
スマホの画面で旅行者が最初に開くのは、たいてい地図アプリです。現在地から近い店を探し、写真と星評価とクチコミを見て、その場で「行く/行かない」を決める。あなたのお店がスマホの地図とクチコミの中で見つかるか——それが、訪日客に選ばれるかどうかの分かれ目になっています。
では、来日する前はどうでしょうか。同じ観光庁調査の「出発前に役に立った旅行情報源」を見ると、トップ3は「SNS」38.9%、「動画サイト」38.1%、「個人のブログ」24.9%。旅行会社や公的機関のサイトよりも、SNS・動画・個人発信といったクチコミ系の情報が上位を独占しています。日本政府観光局ホームページ(12.0%)の3倍以上がSNS経由です。
訪日前、出発前に役に立った旅行情報源(上位)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年 年次報告書」(p.23) mlit.go.jp
つまり訪日客は、来日前にSNS・動画で「行きたい場所」のイメージを作り、来日後はスマホの地図とクチコミで「具体的にどの店か」を決める。この2段構えで動いています。SNSで見つけてもらい、地図で選んでもらう——両方への露出が必要なのです。
注目すべきは、日本滞在中に「役に立った旅行情報」の内訳です。1位は「交通手段」(68.9%)ですが、2位が「飲食店」で57.9%。観光施設(37.2%)や宿泊施設(35.1%)を上回り、食事をどこで取るかは、来日後に現地でスマホを使って探す人が非常に多いことを示しています。予約済みの観光と違い、ランチやディナーは「その場でマップ検索」が当たり前なのです。
57.9%
日本滞在中に役に立った旅行情報の2位=「飲食店」(交通手段に次ぐ高さ)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年 年次報告書」(全国籍・地域・複数回答/p.24)mlit.go.jp
訪日客にとって、店探しはガイドブックの予習ではなく、その場のスマホ検索です。地図に載っていて、写真とクチコミが整っている店だけが、選択肢に入ります。
情報源は国籍や世代でも分かれます。DBJ・日本交通公社(JTBF)の「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 2024年度版」では、口コミサイト(トリップアドバイザー等)・SNS・動画サイトが旅行情報源の上位を占め、初訪日者は旅行会社サイトを、リピーターは動画サイトをより参考にするなど、属性によって接点が異なることが示されています。米国はSNS、台湾は動画サイトといった国ごとの偏りもあります。
共通しているのは、「他の旅行者の声(クチコミ)」が信頼の中心にあること。そして、それぞれが自分の言語で読めることが前提です。日本語のクチコミしかない店と、英語・中国語・韓国語のクチコミが並ぶ店では、訪日客が抱く安心感がまったく違います。多言語のクチコミが自然に集まる状態こそ、インバウンド集客の土台です。
訪日客対策とは、外国語メニューを作ることだけではありません。スマホの地図に正しく載り、写真を整え、多言語のクチコミが集まり続ける状態をつくることです。
難しく考える必要はありません。訪日客の行動から逆算すると、店側がやるべきことは整理できます。(1)Googleマップ(地図)に正しい情報・写真・営業時間を載せる。(2)クチコミを集め、返信し、多言語の声を育てる。(3)SNS・動画で「来日前」に見つけてもらう接点をつくる。この3つを回すことが、スマホで店を探す訪日客に選ばれる近道です。
言葉が通じなくても、写真とクチコミと地図は世界共通です。スマホの中で見つかり、信頼される店になっておくこと——それが、増え続ける訪日客を取りこぼさないための準備になります。
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