日本の空き家は900万戸・空き家率13.8%と過去最多になりました(2023年・速報集計)。相続や住み替えで「この家をどうするか」を考える場面が増えるなか、不動産会社の選ばれ方にも変化が見えています。不動産情報サイト利用者への調査では、売買で不動産会社を選ぶポイントとして「地元で知名度のある会社である」を挙げた人が12.4%(2023年)から27.0%(2025年)へと2倍超に上昇しました(売買の回答者は63名の小規模調査)。一方で、中古住宅の物件探しはインターネットが6割超で最多——つまりお客様は、店に来る前に、物件と一緒に「会社」も見ています。本記事では、“地元で知名度のある会社”が再評価されている背景と、「地域での見え方」(発信・実績・クチコミ)の整え方を、公的統計と業界調査で整理します。
まず、市場の背景からです。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(速報集計)によると、2023年の空き家は900万戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最多を更新しました。
空き家の増加は、裏を返せば「実家を相続した」「住み替えで今の家を手放す」といった場面が、全国で生まれ続けているということでもあります。売る・貸す・活用する——どの選択肢を取るにしても、多くの場合、最初の相談相手になるのは地域の不動産会社です。そのとき、どの会社に声をかけてもらえるか。ここで効いてくるのが、本記事のテーマである「地域での見え方」です。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が情報サイト利用者に行った「2025年版 不動産情報サイト利用者意識アンケート」では、不動産会社を選ぶポイントを尋ねています。売買では「地元で知名度のある会社である」を挙げた人が27.0%。2023年の12.4%から、2024年26.4%、2025年27.0%と、2年で2倍超に上昇しました。なお、この設問の売買回答者は63名と小規模なため、水準そのものは幅をもって見る必要がありますが、2年続けて高い水準にあるという流れは押さえておきたい変化です。
不動産会社を選ぶポイント「地元で知名度のある会社である」(売買)の推移
出典:RSC「2025年版 不動産情報サイト利用者意識アンケート」(2025/10公表・売買の回答者n=63の小規模標本) rsc-web.jp
同じ売買の回答では、「口コミ情報」を選ぶ人も33.3%と、前年の24.0%から増えています。「地元でよく名前を聞く」「実際に取引した人の評判が良い」——大きな金額が動き、やり直しがきかない売買だからこそ、地域での知名度と評判が、あらためて判断材料として見直されていると読める動きです。
「地元で知名度」と聞くと、看板や地域の付き合いを思い浮かべるかもしれません。ただし、いまの物件探しの起点はインターネットです。国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査」によると、中古戸建住宅を取得した世帯が物件の情報収集に使った手段は「インターネット」が62.1%で最多。中古マンションでも63.8%と最も多く、2位の「不動産業者」(45〜48%)を上回りました。※これは中古住宅の区分の数値で、注文住宅など住宅の区分によって傾向は異なります。
62.1%
中古戸建住宅の物件探しで「インターネット」を使った世帯の割合(最多。中古マンションでは63.8%)
出典:国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」(2025/7発表)mlit.go.jp
つまり、「地元で知名度のある会社」という基準も、実際に確かめられる場所はネット上です。名前を知っている会社を検索し、自社サイトの情報・地域での実績・クチコミを見て「ここに相談するか」を判断する——来店は、その後に来ます。地域で長く商売をしてきた会社にとって、これは追い風にできる変化です。積み重ねてきた知名度や信頼が、ネット上でも見える形になっていれば、の話ですが。
空き家・住み替えで相談の入口は広がり、会社は“地元での知名度”と評判で選ばれ、その確認は来店前のネットで行われている。地域で積み重ねた信頼を、ネット上で見える形にしておくことが、そのまま選ばれる準備になる。
ここまでのデータを踏まえると、地域の不動産会社が手をつけるべきは、派手な広告より先に「社名を確かめに来た人に、何が見えるか」を整えることです。データからの示唆として、優先順位を整理します。
要点はシンプルです。空き家と住み替えで相談の入口は広がり、不動産会社は“地元での知名度”とクチコミで選ばれ、その確認は来店前のネットで行われています。地域で積み重ねてきた信頼を、ネット上でも見える形に整えること。それが、住み替え時代に地域の不動産会社が最初に取り組みたい土台づくりです。
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