「今夜、この近くで美味しい店ある?」——その質問の相手が、検索エンジンからChatGPTなどの生成AIに変わり始めています。業種を問わない全国調査では、検索のときに生成AIを使う人は37.0%。飲食に目を向けると、AIツール経由で飲食店を知る人が1割を超え、検索段階でAI検索を使う人は約15%という実測が出てきました。さらに、AIが提案した店に「2回に1回は行く」と答えた人は6割近くと、Instagram・TikTok・インフルエンサー経由(50%未満)を上回ります。本記事では、飲食店の「選ばれ方」がどこまでAIに動いたのかを、公開されている調査データで整理します。
まず前提となる、検索行動全体の変化です。サイバーエージェントの研究組織「GEOラボ」が全国10〜60代9,278名に行った調査(2026年3月公表)では、検索のときに生成AIを利用する人は37.0%。前回調査の31.1%から5.9ポイント増え、20代では初めて過半数を超えました。これは飲食に限らない、業種を問わず全体の数字ですが、「調べる」という行動の入口そのものが動いていることを示しています。
37.0%
検索時に生成AIを利用する人の割合(業種を問わず全体・前回31.1%から+5.9pt・全国10〜60代9,278名)
出典:サイバーエージェント GEOラボ「生成AIのユーザー利用実態調査 第三弾」(2026/3公表)cyberagent.co.jp
注目したいのは、AIの答えが「読んで終わり」になっていないことです。同調査では、AIのおすすめがきっかけで商品やサービスを購入・利用した経験がある人は47.5%。AIの回答に表示されたURLをクリックした人は54.4%、おすすめされたものをさらに自分で検索した人は69.0%にのぼりました。AIの答えは、次の行動の起点になり始めています。
AIのおすすめ・回答をきっかけにした行動(同調査)
出典:サイバーエージェント GEOラボ「生成AIのユーザー利用実態調査 第三弾」(2026/3公表) cyberagent.co.jp
では、飲食店に限るとどうでしょうか。飲食店を運営するCOLLINSが、一人3,000円以上の外食を3か月に1回以上する全国20〜60代1,049名に行った「飲食店の選び方に関するアンケート2026」(2026年2月公表)では、店を「知る」きっかけとしてChatGPTなどのAIツール経由が1割を超えました。さらに、気になる店を「調べる」段階では、AI検索を使う人が約15%にのぼります。
約15%
飲食店を「調べる」段階でAI検索を使う人の割合(一人3,000円以上の外食を3か月に1回以上する全国20〜60代1,049名)
出典:COLLINS「飲食店の選び方に関するアンケート2026」(2026/2公表・n=1,049)prtimes.jp
もちろん、現時点の主流はまだ検索・地図・SNSです。認知の1割超・検索の約15%はいずれも概数であり、正確な値や設問の詳細はリンク先の調査をご確認ください。それでも、飲食店の「知られ方・調べられ方」の選択肢にAIが実際に入り始めたことを示す実測値として、押さえておきたい変化です。
この調査で最も注目したいのは、「提案から来店へのつながり」です。同じCOLLINSの調査では、AIが提案した飲食店に「2回に1回は行く」と答えた人が6割近くにのぼりました。一方、Instagram・TikTok・インフルエンサー経由で知った店について同じ頻度で行くと答えた人は50%未満にとどまります。AI経由で店を知る人はまだ多数派ではないものの、提案が来店に結びつく割合ではSNS経由を上回った——これがこの調査の示すポイントです。
6割近く
AIが提案した飲食店に「2回に1回は行く」と答えた人の割合(Instagram・TikTok・インフルエンサー経由は50%未満)
出典:COLLINS「飲食店の選び方に関するアンケート2026」(2026/2公表・n=1,049)prtimes.jp
背景として考えられるのは、提案のかたちの違いです。検索やSNSでは、ずらりと並ぶ候補から自分で絞り込みます。一方AIには「近くで、静かで、一人でも入りやすい店」のように条件を言葉で伝えると、絞り込まれた候補が返ってきます。対話を通じて自分の条件に合わせて選ばれた提案は、そのまま行動につながりやすい——という解釈ができます。
「AIの提案が実際の行動につながる」傾向は、飲食以外でも確認されつつあります。エクスクリエの調査(2026年5月公表)では、生成AIを月1回以上使う人のうち買い物でAIを活用する人は69.9%(n=1,190)。さらにそのうち61.3%が実際に購入まで至った(n=832)と報告されています。
お客様の一部は、もう「どこで食べるか」をAIに聞き、提案された店へ実際に足を運んでいる。人数はまだ少なくても、提案が来店へつながる割合は高い。
では、店側には何ができるのでしょうか。AIの回答は、公式サイト・地図上の店舗情報・クチコミなど、公開されている情報をもとに組み立てられます。どの店を挙げるかを店側が直接操作することはできず、「AIに載せる」ことを確約する方法はありません。できるのは、AIが参照したときに引用・推薦されやすい材料を、公開情報として整えておくことです。
数字が示しているのは、劇的な断絶ではなく、選ばれ方の静かな変化です。慌てて何かに飛びつく必要はありません。ただ、基本情報・言葉・クチコミという「AIに引用・推薦されやすい材料」は、いずれも今日から費用をかけずに整え始められます。「AIに聞く時代」の入口に立ついま、準備しておく価値のある基礎工事です。
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