「食べログで調べる」より前に、Instagramをスクロールする。若い世代の飲食店の探し方が、静かに置き換わっています。SHIBUYA109 lab.の調査では、Z世代がおでかけ先や体験を探す情報源として最も多かったのはInstagram(64.6%)。検索エンジン(28.8%)の2倍以上でした。しかも、SNSで気になる飲食店に「出会う」人は80.8%、見つけた店をInstagramに「保存する」人は71.2%。飲食店の新しい入口は、発見 → 保存 → 来店という導線の上にあります。本記事では、その現在地を実在の国内調査で整理します。
SHIBUYA109 lab.が15〜24歳の女性413名に行った「Z世代のSNS利用最新動向2025」(2025年8月公表)によると、おでかけ先や体験を探すときに使う情報源は、Instagramが64.6%で1位。TikTok(39.0%)、X(35.1%)が続き、検索エンジンは28.8%にとどまりました。かつて「探す」の起点だった検索窓より、写真とリールが並ぶフィードのほうが先に開かれています。
64.6%
Z世代がおでかけ先・体験を探す情報源としてInstagramを挙げた割合。検索エンジン(28.8%)の2倍以上
出典:SHIBUYA109 lab.「Z世代のSNS利用最新動向2025」(2025/8公表・15〜24歳女性413名)shibuya109.co.jp
「飲食店」に絞った調査でも、傾向は同じです。StoreProがZ世代(18〜28歳)1,012名に聞いた調査(2025年8月)では、飲食店を探すときに最もよく使うSNS・媒体はInstagram(52.2%)。TikTok(15.3%)、グルメサイト(食べログ・ホットペッパーグルメ等/9.8%)を大きく上回りました。飲食店選びの主導線が、グルメサイトからビジュアル中心のSNSへ移っていることが読み取れます。
飲食店を探すときに最もよく使うSNS・媒体(Z世代・2025年8月)
出典:StorePro「Z世代の飲食店探しに関する調査」(2025/8実施・Z世代1,012名) syncad.jp
もう一つ押さえておきたいのが、この入口が「探しに行く前」から始まっている点です。ファストマーケティングの調査(2025年4月公表)では、SNSや動画サイトをなんとなく見ているときに気になる飲食店に「出会う」人が80.8%。目的を持って検索する前に、フィードの中で店との出会いが生まれています。飲食店にとっては、指名検索を待つのではなく、知らない人のフィードに「表示される」ことが最初の勝負どころになりつつあります。
「フォロワーがいない店には関係ない」——そう思われがちですが、実際はその逆です。Instagram公式の説明によれば、発見(Explore)タブはフォローしていないアカウントの写真やリール動画を、利用者の興味・関心に合わせておすすめする場所です。おすすめの選択・ランク付け・配信はAIが担い、各ユーザーに合わせて内容が更新され続けます。つまり、投稿はフォロワー数に関係なく、「その店を気に入りそうな人」へ自動的に届く可能性を持っています。
この「フォロワー以外へのリーチ」を最も担うのがリールです。ファストマーケティングの同調査でも、Z世代の71.7%が「短尺動画から効率よく情報収集できる」、75.0%が「テキストより画像・動画のほうが効率的」と回答しました。文字で説明された店より、15秒の動画で店内・料理・空気感が伝わる店のほうが、そもそも「発見」されやすい構造になっています。
80.8%
SNS・動画サイトを見ているときに、気になる飲食店に「よく/ときどき出会う」と答えたZ世代の割合
出典:ファストマーケティング「Z世代のSNS利用の実態調査【2025年版】グルメ・飲食店編」(2025/4公表・Z世代15〜29歳360名)prtimes.jp
加えて、探す局面ではハッシュタグと位置情報が効いてきます。Instagram公式は、検索バーからキーワードで人・トピック・場所を探せることを機能として挙げています。「#渋谷ランチ」「#(店のあるエリア)カフェ」といったタグや位置情報での検索は、地元・近隣で店を探す人に届く導線です。写真・ハッシュタグ・位置情報という3点が、飲食店にとっての新しい「看板」になっています。
発見タブとリールは、フォロワー数の多寡ではなく「その投稿を気に入りそうな人か」で表示先を決める。だからこそ、写真1枚・動画15秒の作り込みが、そのまま新規の来店客数に効いてくる。
Instagramで飲食店を探す行動の核心は、「その場で予約」ではなく「保存して、あとで行く」という時間差にあります。ファストマーケティングの調査では、見つけた飲食店の情報をInstagramのコレクションに保存する人が71.2%。GoogleマップにピンやWebサイトを保存する人も61.1%に上りました。気になった店は「行きたいリスト」として静かに蓄積され、外食のタイミングでそこから選ばれます。
見つけた飲食店の情報を「保存する」割合(Z世代・2025年)
出典:ファストマーケティング「Z世代のSNS利用の実態調査【2025年版】グルメ・飲食店編」(2025/4公表) prtimes.jp
この「保存」は、飲食店にとって見逃せないシグナルです。保存は「後で見返したい」という強い関心の表れであり、Instagramのアルゴリズム上も、保存の多い投稿はより多くの人におすすめされやすくなるとされています。1件の保存が、次の誰かへの表示を呼ぶ——保存されやすい投稿(メニューが一目でわかる、店名・場所・営業情報が拾える)を積み重ねることが、発見の連鎖につながります。
認知から来店までの流れは、他の調査でも裏づけられます。COLLINSの「飲食店の選び方2025」(2025年2月公表・全国300名)では、その店を知るきっかけになったメディアとしてInstagramが71.1%で最多。記念日やデートなど特別な機会に店を探す場面でも、Instagram(50.4%)が食べログ(48.2%)を上回りました。「知る(発見)」も「決める(比較)」も、Instagramが担い始めています。
ここまでのデータは、飲食店側の動きとも符合します。飲食店ドットコムの調査(2024年6月公表・飲食店393名)では、SNSをInstagramで運用している店が79.1%と最多で、集客・認知拡大で最も効果を得られたSNSもInstagram(48.3%)。一方で、運用の難しさとして「投稿内容・ネタ(42.5%)」「フォロワー・再生数の獲得(41.7%)」が挙がりました。多くの店がInstagramの重要性を認識しつつ、「何を、どう見せるか」で差がついているのが実情です。以上を踏まえた対策の優先順位は、次のとおりです。
飲食店の新しい入口は、検索窓ではなくフィードの中にあります。発見 → 保存 → 来店という導線を前提に、写真・ハッシュタグ・位置情報を一つずつ整える。特別な予算や大量のフォロワーがなくても、「その店を気に入りそうな人」に届く仕組みは、すでに用意されています。
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