ネット通販が伸び続けても、モノを買う場所の中心は今も実店舗です。物販分野のEC化率は9.78%(2024年)。裏を返せば、物販の購入額の約9割は依然として店頭で発生しています。ただし、その店を「どう見つけるか」は大きく変わりました。店舗を探す手段はGoogleマップ・Google検索がともに60.2%で最多。買い手はスマホの地図で「近くで、今すぐ買える店」を探し、営業時間や在庫を確かめてから足を運びます。ECに流れない「近くで欲しい」需要を取りこぼさないために、いま何が起きているのかを公的データと大手調査で整理します。
EC全盛と言われますが、物販に限れば主戦場は今も店頭です。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)によると、2024年の物販系BtoC-EC市場は15兆2,194億円、EC化率は9.78%。前年から0.40ポイント伸びましたが、それでも物販の購入額のおよそ9割はEC以外=実店舗などのオフラインで動いています。
9.78%
物販系分野のBtoC-EC化率(2024年)。裏を返せば購入額の約9割は今も実店舗などオフライン
出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025/8公表・物販系市場15兆2,194億円)meti.go.jp
特に「実物を見て選びたい」ものほど、EC化は進んでいません。同調査で「食品、飲料、酒類」のEC化率は4.52%にとどまります。生鮮や日用品、その場で必要になるものは、今すぐ近くの店で買う——この行動が、地域の実店舗を支える需要の芯です。ネット通販と競うのではなく、「近くで、今すぐ」という土俵で見つけてもらえるかが小売の分かれ目になります。
物販の約9割は、まだ店頭で買われている。問題は「売り場」ではなく、その売り場に「たどり着いてもらう入口」——スマホの地図とローカル検索の側に移っている。
では、買い手はどうやって店を探しているのか。ニュートラルワークスが首都圏の20〜50代550名に聞いた調査(2025年5月)では、店舗を探す手段は「Googleマップ」「Google検索」がともに60.2%で最多。長く定番だった「口コミサイト」(58.0%)を上回りました。地図とGoogle検索が、店を見つける最初の入口になっています。
店舗を探すときに利用する手段(複数回答・2025年5月)
出典:ニュートラルワークス「店舗検索に関する調査」(2025/5公表・首都圏550名) prtimes.jp
この背景にあるのが、地名を入れずに探す「近くの〇〇」型のローカル検索の広がりです。Googleは、スマホの普及とともに「近くのカフェ」「近くの〇〇」のような、場所を指定しない検索が年々増えていると説明しています。渋谷にいる人が「近くのカフェ」と打てば、位置情報から近い店が地図とともに表示される。「今いる場所から、今すぐ行ける店」を探す買い手が増えたということです。指名(店名)ではなく地図で見つかる状態を作れているかが、この層に届く条件になります。
そして、地図で見た情報はそのまま来店につながります。同じ調査で、Googleマップ経由で過去1年以内に来店した経験がある人は64.5%。3人に2人近くが、地図で見つけた店に実際に足を運んでいます。地図上に「営業中か」「近いか」「良さそうか」が出ていない店は、この入口の時点で候補から外れてしまいます。
64.5%
Googleマップで店を探し、過去1年以内に実際に来店した経験がある人の割合(首都圏)
出典:ニュートラルワークス「店舗検索に関する調査」(2025/5公表・首都圏20〜50代550名)prtimes.jp
買い手は、店に入る前にスマホで判断を済ませています。ニュートラルワークスの調査で、地図・検索の結果から店舗情報を確認するとき見る項目は、「星の数(評価)」59.3%、「口コミの内容や件数」55.6%、「写真(外観・内観・商品など)」50.0%。評価・口コミ・写真の3点で、行く価値がありそうかを来店前にふるいにかけています。
地図・検索で店舗情報を確認するとき見る項目(複数回答・2025年5月)
出典:ニュートラルワークス「店舗検索に関する調査」(2025/5公表・首都圏550名) prtimes.jp
この「調べてから動く」行動は、来店率にはっきり表れます。トライハッチがGoogleマップで店を検索した1,090名の行動を分析した調査(2024年5月)では、マップ上で何らかの行動をした人の73%が来店。さらに、複数店を比べるときにルート検索とサイト閲覧を両方した人の来店率は85%と、サイト閲覧だけ(65%)を大きく上回りました。営業時間や場所を確かめ、写真やクチコミを見て「行ける」と分かるほど、来店の確度は上がります。
だからこそ、地図に載せる情報の鮮度が来店を左右します。実際、消費者がその日に足を運ぼうとしたとき、「営業時間が古い」「在庫や取扱いが分からない」「写真がない」店は、その場で候補から外れます。近くにいて、今すぐ買いたい人ほど、確認が取れない店を待ってはくれません。正しい営業時間、扱う商品やサービスが伝わる写真、直近のクチコミ——これらが揃っているかどうかが、機会損失の分かれ目です。
ネットと店舗は、対立ではなく地続きです。オンラインで下調べして実店舗で買う「ウェブルーミング」、店で実物を見てオンラインで買う「ショールーミング」はどちらも一般的な行動になっています。トランスコスモスがアジア10都市で行った調査(2018年12月〜2019年1月)では、東京でもショールーミング経験者62%、ウェブルーミング経験者51%。数字はやや古いものの、買い手が店頭とネットを行き来するという基本構図は今も変わりません。重要なのは、この行き来のどこかで自店が「見つかる」ことです。
ここまでの調査が示すのは、小売の来店が「近くで探す→地図で見つける→スマホで確かめる→店に行く」という流れに乗っているという事実です。EC化率9.78%という数字は、裏を返せば約9割の購入が実店舗に残っているということ。その需要を取りにいくには、売り場を磨くだけでなく、地図とローカル検索という「入口」を整える必要があります。優先順位は次のとおりです。
実店舗小売にとって、地図とローカル検索は「デジタルが得意な店の付加施策」ではありません。約9割が残る店頭需要を取りこぼさないための、来店の入口そのものです。売り場の前に、まず「見つけてもらえる状態」を整える——それが、ECに流れない「近くで欲しい」を取りにいく最短の道筋です。
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