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飲食 / 倒産と二極化

飲食店の倒産、初の1,000件超——
それでも選ばれる店がやっていること

Nest Lab飲食 / 倒産と二極化2026.07.11出典4件

飲食業の倒産1,002件で初の1,000件超。外食市場は+5.0%で二極化

2025年、飲食業の倒産は1,002件。集計が始まった1996年以降の30年間で、初めて1,000件を超えました(東京商工リサーチ)。一方で、外食の市場そのものは縮んでいません。2024年度の外食市場規模(東名阪3圏域・夕食市場の推計)は3兆6,196億円で前年度比+5.0%。市場が伸びているのに、退出する店は過去最多——いま起きているのは「縮小」ではなく「二極化」です。本記事では、倒産統計と市場データを突き合わせ、選ばれる側に回るために整えるべきものを、事実→示唆→打ち手の順で整理します。

倒産は初の1,000件超。急増したのは「物価高」と「人手不足」。

まず事実からです。東京商工リサーチの調査によると、2025年の「飲食業」倒産は1,002件(前年比+1.0%)。1996年に集計を始めてからの30年間で、初めて1,000件の大台を超えました。件数の伸び自体は+1.0%と小幅ですが、高止まりしたまま記録を更新した形です。

1,002

2025年の「飲食業」倒産。前年比+1.0%で、1996年以降の30年間で初めて1,000件を超えた

出典:東京商工リサーチ「2025年『飲食業』倒産 初の1,000件超」(2026/1公表)tsr-net.co.jp

中身を見ると、増え方が急な要因がはっきりしています。同調査では、「物価高」を要因とする倒産が136件で前年比+126.6%「人手不足」を要因とする倒産が55件で+161.9%。件数全体は前年並みでも、仕入れ・光熱費・人件費の上昇に耐えきれなかったケースが、この1年で倍以上に増えたということです。

2025年の飲食業倒産のうち、前年から急増した要因(東京商工リサーチ)

「物価高」倒産136件(+126.6%)
「人手不足」倒産55件(+161.9%)

出典:東京商工リサーチ「2025年『飲食業』倒産 初の1,000件超」(2026/1公表) tsr-net.co.jp

もう一つの特徴は、規模の偏りです。倒産した飲食業のうち資本金1千万円未満が886件で88.4%。倒産は小規模・零細な店に集中しています。体力の薄い店ほど、コスト上昇の影響を吸収する余地が小さい、という構図が読み取れます。

88.4%

2025年に倒産した飲食業のうち、資本金1千万円未満の構成比(886件)。小規模・零細に集中

出典:東京商工リサーチ「2025年『飲食業』倒産 初の1,000件超」(2026/1公表)tsr-net.co.jp

なお、帝国データバンクの集計(東京商工リサーチとは集計基準が異なるため、件数は一致しません)でも、2025年の飲食店倒産は900件と過去最多・3年連続の増加でした。同調査によると、飲食店の価格転嫁率は32.3%で、全業種平均の39.4%を下回っています。コストが上がった分を価格に反映しきれていない——値上げ一つとっても難しい業種であることが、数字に表れています。

それでも外食市場は+5.0%。起きているのは「二極化」。

倒産が過去最多と聞くと「外食離れが進んでいるのでは」と考えたくなりますが、市場データは逆を示しています。ホットペッパーグルメ外食総研の推計では、2024年度の外食市場規模は3兆6,196億円で、前年度比+5.0%。この数字は首都圏・関西圏・東海圏(東名阪)の3圏域・夕食市場を対象とした推計ですが、外食にお金を使う人が減ったのではないことを示す材料になります。

+5.0%

2024年度の外食市場規模3兆6,196億円の前年度比(東名阪3圏域・夕食市場の推計)

出典:ホットペッパーグルメ外食総研「2024年度外食&中食動向」(2025/9公表)hotpepper.jp

市場は伸びているのに、退出する店は初の1,000件超。つまり、お客様や外食のお金が消えたのではなく、行き先が偏っていると考えられます。物価高でお客様の側も「どの店に行くか」を選ぶ姿勢が強まるほど、来店先は情報が整っていて比較に耐える店へ集まりやすくなる——倒産統計と市場統計のギャップは、その示唆として読むことができます。

外食市場は+5.0%、倒産は初の1,000件超。数字が示しているのは「外食離れ」ではなく、選ばれる店とそうでない店の差が開いていく「二極化」である。

選ばれる側に回る——差がつくのは、情報発信とクチコミの整備。

では、選ばれる側とそうでない側は、どこで分かれるのか。手がかりの一つが、来店前の「比べられ方」です。全国の20〜60代500名を対象にした民間調査(イクシアス・2025年1月実施)では、Googleのクチコミについて星3.8以上を来店の基準にする人が計49.6%(最多は「4.0」の26.0%)、30件以上あると信用の目安になるとした人が計51.4%でした。二極化の時代、お客様は来店前に「星」と「件数」という共通のものさしで店を比べています(この比べられ方の詳細は、関連記事で扱っています)。

この前提に立つと、選ばれる側に回るための打ち手は、特別なものではありません。データからの示唆として、優先順位を整理します。

  1. 基本情報をつねに正確に保つ。営業時間・定休日・場所・メニュー・価格。値上げをしたときこそ、現在の価格と内容を正しく載せる。古い情報のまま放置された店舗ページは、来店前の不安材料になる。
  2. 価格の背景を自分の言葉で発信する。価格転嫁率32.3%(全業種平均39.4%を下回る)という数字のとおり、飲食店は値上げ自体が難しい業種。素材・仕込み・提供内容など「なぜこの価格か」が伝わる発信は、お客様が納得して選ぶための材料になる。
  3. クチコミを日常的に育てる。星と件数は、お客様が共通で使うものさし。来店時に感想をいただける導線を日常の営業に組み込み、いただいた指摘には誠実に向き合う。
  4. 写真を「いまの店」に合わせて更新する。メニューや店内が変わったのに写真が昔のまま、では比較の土俵で不利になる。看板メニュー・店内・外観を現在の姿にそろえる。
  5. 整えた情報は、AI時代の資産にもなる。店の探し方は、検索や地図に加えて「AIに聞く」方向へも広がりつつある。AIは公開されている店舗情報やクチコミを材料に答えを組み立てるため、正確な情報発信とクチコミの蓄積は、AIに引用・推薦されやすい材料を整えることにもつながる。

初の1,000件超という数字は重いものですが、同じ年の市場は+5.0%で伸びています。二極化とは、裏を返せば「情報を整えた店に来店が集まりやすくなる」構造でもあります。倒産統計を怖い数字で終わらせず、自店の情報とクチコミがいまお客様にどう見えているかを点検すること——それが、選ばれる側に回るための現実的な一歩です。

Sources / 出典

  1. 東京商工リサーチ「2025年『飲食業』倒産 初の1,000件超」(2026/1/13公表・2025年の飲食業倒産1,002件=前年比+1.0%・1996年以降30年で初の1,000件超/「物価高」倒産136件=前年比+126.6%/「人手不足」倒産55件=+161.9%/資本金1千万円未満886件=88.4%・2026-07-11閲覧) — https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202301_1527.html
  2. 帝国データバンク「『飲食店』の倒産動向(2025年)」(2026/1/13公表・飲食店倒産900件で過去最多・3年連続増/価格転嫁率32.3%=全業種平均39.4%を下回る/東京商工リサーチとは集計基準が異なる・2026-07-11閲覧) — https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260113-insyokuten2025/
  3. ホットペッパーグルメ外食総研「2024年度外食&中食動向」(2025/9/17公表・2024年度の外食市場規模3兆6,196億円=前年度比+5.0%/首都圏・関西圏・東海圏の3圏域・夕食市場の推計・2026-07-11閲覧) — https://www.hotpepper.jp/ggs/research/article/column/20250917
  4. イクシアス「飲食店利用に関するアンケート」(2025/4/10公表・全国20〜60代500名・2025年1月実施・来店基準の星評価「3.8以上」計49.6%=最多は4.0の26.0%/信用の目安となるクチコミ件数「30件以上」計51.4%・2026-07-11閲覧) — https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000116281.html

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